笑って、笑って ─『日本の空を見つめて』(倉嶋 厚)─ | 出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

「披沙揀金」―砂をより分けて金を取り出す、の意。
日常出会う砂金のような言葉たちを集めました。

 春は「山笑う」、夏は「山滴る(したたる)」、秋は「粧う(よそおう)」、冬は「山眠る」と言われます。

 今の山はまさしく、冬の深い眠りから覚め、日の光を浴びて楽しくて仕方ないといったところでしょう。

 

 もう少しすると、ユリの花が馨り始めます。

 

  道の辺の草深百合の花笑みに笑みしがからに妻と言ふべしや (万葉集)

    くさのへの くさぶかゆりの はなえみに えみしがからに つまというべしや

 

 「道端のユリの花のように微笑んでくださった貴女を、妻と呼んでもよいでしょうか」、一方で「ちょっと微笑んだぐらいで、気軽に妻などと言わないでね」と読む人もいるそうです。それもユリの気高さを感じられて、趣があります。

 

 「笑う」が季語になりそうな心地よい季節です。

 さあ、笑って、笑って。