大切な人 ─『クマと森のピアノ』(デイビット・リッチフィールド)─ | 出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

「披沙揀金」―砂をより分けて金を取り出す、の意。
日常出会う砂金のような言葉たちを集めました。

 ある日、こぐまのブラウンは、森の中でピアノを見つけます。毎日、ピアノを弾くブラウン。そのメロディに誘われて、森のクマたちが集まってきます。
 ところが、ある日、女の子が、「いっしょに街に行きましょう」とブラウンを誘います。迷ったブラウンでしたが、街への興味と、大勢の人の前でピアノを弾いてみたいという気持ちから、街へと出て行きます。
 街でも、ブラウンはみんなの人気者。満員のコンサート会場で、毎晩のようにブラウンは拍手を浴び るのでした。街に来て、ブラウンの夢は、全部かなえられました。 でも、心のどこかで、「何かがちがう。何かが足りない。」と・・・。

 ブラウンが選んだのは、自分の大切な場所で、大切なひとたちのためにピアノを奏でることでした。

 大切な場所で、大切なひとたちのために、
 ピアノの音は流れ続けました。
  (デイビット・リッチフィールド 作、俵万智 訳、『クマと森のピアノ』より)

 大切な場所も、大切な人もちゃんと分かっているのに、ちょっとわきへ置いてしまいがちな人(私)
のためのような絵本でした。