隠れた言葉を集めて ─『オリジン』余談─ | 出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

「披沙揀金」―砂をより分けて金を取り出す、の意。
日常出会う砂金のような言葉たちを集めました。

 昨日まで3回にわたり、ダン・ブラウンの『オリジン』の紹介をしてきました。

 今日は、そこで取り上げられなかったものの、書きとどめておきたい言葉をとりとめもなく集めてみました。

 

 ・・・しかし現代美術では、傑作は制作よりむしろ発想に基づくものであることが多い。たとえば、和音ひとつと沈黙だけで40分の交響曲を作ることはだれでも簡単にできますが、実際に思いついたのはイヴ・クラインでした。

 (『オリジン 上』より) 

 例えば、ジョン・ケージに「4分33秒」という音楽作品があります。演奏者は、4分33秒の間、何も演奏しません。聴衆が聴くのは沈黙、いや一見沈黙のように思える中で聞こえてくる音 ─ たとえば、隣の人の息づかいやせきばらい、衣擦れの音。空調のかすかな機械音。どこからか鳴る「コトリ」という物音。身の回りの全ての音が音楽であるというメッセージなのでしょうか。

 この作品も、だれでも演奏することができます(何も音を発しないわけですから)。しかし、この発想は、ジョン・ケージの功績と言えるでしょう。

 

 第一印象を与える機会は一度きりですから

 (『オリジン 上』より) 

 もし、その人とその後何度も会う機会があっても、最初の1回は、一度きりです。出会いの大切さをこの短い言葉がずばり表しています。

 

 現在の科学は月単位で進歩しています。目もくらむような速さです。ほんの少し経てば、今日の世界最速のスーパーコンピューターが算盤に見え、今日の最先端の手術法が野蛮に感じられ、今日のエネルギー源が部屋をともす蠟燭並みに古くさく思えるでしょう。

 (『オリジン 上』より)

 面白い比喩です。しかし、実は比喩ではなく、現実になるのかもしれません。そのような未来が楽しみなような、でも心配なような心持ちがします。

 

 どんなものも新たに生み出すことはできない、それはもとから自然に記されているのだから。

 独創性(オリジナリティ)は起源(オリジン)への回帰によって成り立つ

    ─アントニ・ガウディ

 (『オリジン 中』より)

  “サグラダ・ファミリア”や“カサ・ミラ”で知られるガウディ。自然を模したその作品群は、ガウディが幼い頃、バルセロナ郊外で過ごし、道端の草花や小さな生き物たちと触れ合った体験から来ていると言われています。

 

 成功とは、失敗から失敗へと情熱を失わずに進む能力のことだ。

   ─ウィンストン・チャーチル

 (『オリジン 下』より) 

  『オリジン』の中では、これを「コンピューターの唯一最大の強み」と表しています。

 人工知能・ウィンストンは、こう語ります。

 「コンピューターの忍耐力は無限ですから。たとえ何億回失敗しても、わたくしが挫折することはありません。一億回目も一回目と同じ力で問題解決に挑むことができます。人間にはできません」

 これを「情熱」と言ってよいかどうかは別として・・・。

 

 物理法則に生命を創造するほどの力があるのなら・・・その法則を創造したのはだれなのか。

 (『オリジン 下』より)

 生命は、神話に描かれているようにして生じたのではなく、物質と物質の反応により、物理法則に基づいて生まれてきた。それならば、その物理法則を創造したのはだれなのか・・・。

 突き詰めていけばいくほど、生命の起源(オリジン)の謎が深まります。しかし、謎があるからこそ、もっと知りたい、分かりたいという人類の進歩と、人間への愛情が生まれるのかもしれません。

 

 

 以上です。

 「余談」のつもりが、本編より長くなってしまいました。最後までお読みくださり、ありがとうございました。