“私の”来し方・行く末 ─『オリジン 下』(ダン・ブラウン)─ | 出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

「披沙揀金」―砂をより分けて金を取り出す、の意。
日常出会う砂金のような言葉たちを集めました。

「われわれはどこから来たのか。われわれはどこへ行くのか。」

 『オリジン』全3巻を通しての壮大なテーマ。いよいクライマックスへ。

 

 人間の起源は、アダムとイブに遡る宗教の世界なのか。

 それとも、生命の誕生は、科学で説明できるのか。

 そして、私たちの未来を描くのは、神を信じる心か、人工知能か─。

 

 『オリジン』の登場人物たちの言葉を追っていきましょう。

 

<ある牧師>

 宗教は進化にとって有利です。宗教を重んじる社会は無宗教の社会よりうまく協力するので、反映しやすい。これは科学的事実です。

 

<人工知能 ウィンストン>

 テクノロジーのない世界と、宗教のない世界・・・どちらに生きることを望みますか。薬も電気も交通機関も抗生物質もない世界と、架空の物語や想像上の存在を巡って争いつづける狭量な者たちのいない世界・・・どちらに生きることを望みますか

 

<未来学者 エドモンド・カーシュ>

 人間の精神には、明らかな虚構を神聖な事実にまで押しあげ、そのためなら人殺しもいとわないとさえ思い込んでしまう力がある。科学の普遍的真実ならば、人々をひとつにできる。未来の世代の集結地点になれる。

 

<カトリック教会 司教 パルデスピーノ>

 カーシュほどの富や特権を持たない気の毒な人々にとって、この未来学者の主張がどれほど害になるか ─ 食べていくことや子供たちを養うことに日々追われ、毎朝起き出して困難な人生に立ち向かうために、神という希望の光にすがる人もいるのに。

 

 もちろん、『オリジン』を通して、作家 ダン・ブラウンが伝えようとしている答えはあります。

 でも、自分なら冒頭の問いにどう答えるか、『オリジン』と対話しながら、それを考えてみるのも楽しいものです。