「われわれはどこから来たのか。われわれはどこへ行くのか。」
『オリジン』全3巻を通しての壮大なテーマ。
未来学者・カーシュは、バルセロナ大学での講演で、次のように説きます。
「わたしは人間が大好きです。人間の頭脳も、人類という種も、無限の可能性を秘めていると信じています。人類は光明が差す新たな時代へ歩み入ろうとしているのだと信じています。その世界では、ついに宗教が息絶え・・・科学が治するでしょう」
宗教の違いに端を発する争い。独りよがりの信条に基づくテロ。「宗教」と聞くと、どうしてもいかがわしいイメージを払拭しきれない時勢になってきています。その上でカーシュの理論を聞いていると、科学こそが未来を創造する手段だと思えてきます。
もう一つ、本書の中で重要な位置を占めているのが、人口知能・ウィンストン。カーシュ殺害の疑いをかけられたラングドンを、適確な指示で窮地から救い出していきます。
カーシュを殺害したのは、科学至上主義に反発する宗教団体であり、それをあばき、真実を知らしめるのが科学なのか。ここまでを読むと、そのように思ってしまいます。
いよいよ下巻へ。結末はいかに。