尼崎にも「33個めの石」が ─天声人語─ | 出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

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「披沙揀金」―砂をより分けて金を取り出す、の意。
日常出会う砂金のような言葉たちを集めました。

 やっぱり、人間ってやさしい。

 昨日のブログで、14年前の尼崎市の列車事故を取り上げ、「運転士を除く106人」のための追悼慰霊式が行われたことをお伝えしました。 →詳しくはコチラ

 

 でも、ごめんなさい。

 今日の新聞で、この列車事故でも「33個めの石」を置いた人が紹介されていました。

 尼崎市の事故で息子を亡くしたお母さんは、運転士も含め107羽の「連鶴」を折りました。

 

 必ず107羽。亡くなった乗客106人に運転士含めた分だ。運転士には「なんで事故を起こしてしまったの」と聞きたい気持ちはある。でも、「優しすぎる吉宗君はきっと運転士をかばい、『大丈夫か』って声をかけるんじゃないかな」と思ってきた。

 (2019年4月26日「朝日新聞」より)

 

 運転士を思うやさしさ、そして、1羽1羽ゆっくりと、107名を思いながら折るやさしさ。「107名」というひとくくりではなく、息子を思うように一人一人に祈りを折りこんだお母さん。

 やっぱり、人間ってやさしい。