洗練された「うそ」の世界に遊ぶ ─『蛇を踏む』(川上弘美)─ | 出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

「披沙揀金」―砂をより分けて金を取り出す、の意。
日常出会う砂金のような言葉たちを集めました。

「うそ」の国は、「ほんと」の国のすぐそばにあって、そのところどころには「ほんと」の国と重なっている部分もあります。「うそ」の国は、入口が狭くて、でも、奥行きはあんがい広いのです。…わたしの作った「うそ」の中でちょっと遊んでみてはくださいませんでしょうか。

(川上弘美さんのあとがきより)
 
蛇が女の人に姿を変え、ヒワ子を蛇の世界に誘う「蛇を踏む」。
消えた壺がしゃべり、消えた兄の気配が家族に充溢する「消える」。
とりとめのない不思議な出来事に次々と出合う「惜夜記(あたらよき)」。
 
自由で脈絡のない子どもの作り話が昇華され、物語となったような面白さがあります。たとえて言えば、子どもの純真さを洗練させて表したモーツァルトの音楽とでも言えましょうか。