あの頃は、町のいたるところに子どもがあふれていた。存在感のあるおじさんと、お節介なおばさんがいた。日常が喜怒哀楽に満ち、人は丁寧に恋をした。そんな懐かしい時代の商店街を舞台にした小説、『かたみ歌』。
七つの短編すべてに〈死〉が描かれているからこそ、そこに垣間見える“恋”や“家族”や“夢”などの〈生〉が、ひときわ愛おしく見えてくるのです。
「面白いものですね、世の中というものは。日々誰かが去り、日々誰かがやってくる。時代も変わり、流行る歌も変わる…けれど人が感じる幸せは、昔も今も同じようなものばかりですよ。」
(朱川湊人、『かたみ歌』より)
このブログの冒頭に、「あの頃は〜いた。」とすべて過去形で書いてしまいました。
でもきっと、懐かしいような幸せは、昔と同じように、今にもきっとたくさん隠れているはずです。