にょきっと生えてきた花の芽をめぐって、虫たちが話しています。
「なずず このっぺ?」
「わっぱど がららん。」
「じゃじゃこん!」
何のことかさっぱり分からない会話が続きます。でも、絵を眺めながら見ていると、虫たちの気持ちが分かってくるのです。
思い出すシーンがあります。幼稚園児たちが教室で遊んでいるのを見ていたときのことです。
二人の園児が、一緒に絵本を読んでいます。一人がもう一人に読み聞かせているようです。
(すごいなあ。もう文字が読めるのか。)と思いながら見ていると、どうやらそれは全くの創作のようなのです。読み聞かせている子どもは、絵を見て、実際の話とはまったく違う話を創作しながら話しているのです。文字は読めなくても、絵から想像して自由に絵本の世界を味える子どもってすごいなあと感じたものでした。
『なずず このっぺ?』を読みながら、その時の子どもの心が味わえたように思いました。
虫たちが何を言っているのか分からない。でも、絵を眺めていたら、なんとなく昆虫語が読めてきて、自分だけの想像の世界が広がっていく。
『なずず このっぺ?』が、絵本を読み始めたころの子どもに帰らせてくれました。
絵本は、いつも私たちを童心に帰らせてくれます。