「ごめんね」までの懐かしい時間 ─『ごめんね ともだち』(内田麟太郎 作、降矢なな 絵)─ | 出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

「披沙揀金」―砂をより分けて金を取り出す、の意。
日常出会う砂金のような言葉たちを集めました。

 キツネのおかしなおもいつきから、二人はともだちになりました・・・。

 きっかけなんて、なんだっていいね。

  (内田麟太郎、『ともだちや』より)

 

 オオカミらしくないオオカミさんと、キツネらしくないキツネさんが友達になりました。

 ところが今日は、遊んでいるうちに大げんか。

オオカミ「いんちきは、この うちから でていけ!」

キツネ 「二どと くるもんか! こんな いえ。ずるいのは そっちだ。ずるっこ おしっこ ひがみっこ!」

 

 言ってしまったものの、オオカミはすぐにしょげこみます。

「お、おれの いいすぎだった。あいつは、いんちきなんか ぜったい していない」

 

 それからというもの、お互いに謝ろうと思って機会をうかがうものの、いざとなると意地を張ってしまいます。それでも心の中は・・・。

 

オオカミ(「ごめん」も いえないなんて。わるいのは おれなのに)

キツネ (いやだよ、いやだよ。オオカミさんと これっきりに なるなんて・・・)

 

 なかなおりが したいけど、あのことばが なかなか いえないのです。

 たった ひとことなんだけどな。

 「ご、め、ん、ね」って。

  (内田麟太郎、『ごめんね ともだち』より)

 

 ひょんなことから友達になり、ひょんなことで大げんかをした二人は、またひょんなことから仲直りをするのですが、私が懐かしむのは「ごめんね」を言い出せずに逡巡する二人の気持ち。

 

 なかなか「ごめんね」を言えない子どもたちは、やっと言えた「ごめんね」で、「ごめんね」の大切さを知るのでしょうね。