月と太陽の人 ─田中ウルヴェ京さん─ | 出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

「披沙揀金」―砂をより分けて金を取り出す、の意。
日常出会う砂金のような言葉たちを集めました。

 田中ウルヴェ京(みやこ)さんをご存知でしょうか。

 1988年のソウル五輪シンクロ・デュエットで小谷実可子さんとコンビを組み、銅メダルを獲得した選手です。

 

 今日、田中さんのご講演をおうかがいする機会がありました。

 同じように活躍しても、当時は小谷さんばかり注目され、悔しい思いをしたこともあったそうです。小谷さんが太陽だとすると、月のような立場と言えるのかもしれません。

 それでも、前向きに強く自分の選んだ道を進んでいた田中さんですが、ある時、

「イラついたり落ち込んだりしていいんだよ。そんなミヤコが素敵だよ。」

と言われ、涙が止まらなかったそうです。

 

 ご講演の中で、「イラついたり悲しんだりする感情がなければ、嬉しいとか楽しいとかの感情も消えてしまう」というお話もされました。悲しいことがあるから楽しいことが分かる。イラつく時を乗り越えてリラックスできる幸せを味わえるということでしょう。どの感情も自分であり、正しい感情なのだそうです。

 

 田中さんは、気さくで、子供のように素直に感情を表現し、聞く人の心の覆いを一枚一枚外していく、太陽のような人でした。

 月の経験をし、今日、太陽のように輝いていた田中さん。月と太陽、両方の輝きを内にもった田中さんは、そのお話も、お人柄もとても魅力的でした。

 

 帰りのバスの中で、隣に座った方が、「ぼくは、昔から、小谷さんよりも田中さんのファンだったんだよ。」と話しかけてきてくれました。

 その人も魅力的に見えてきました。