日本の童謡の数は諸外国に比べて圧倒的に多く、しかも淋しさや悲しさの込められているものが多いと、藤原正彦さんは、その著書『国家と教養』の中で言っています。
「赤とんぼ」(♪夕焼け小焼けのあかとんぼ 負われて見たのはいつの日か…)
「花かげ」(♪十五夜お月さまひとりぼっち…)
たしかに、イギリスの「ロンドン橋落ちた」、フランスの「キラキラ星」、アメリカの「メリーさんの羊」などと比べてみると、日本の童謡の特徴が際立ちます。
そして、このような童謡で育ったことが日本人の感受性の土台になっているとしています。
私も幼い頃、てんとうむしのレコードプレーヤーで、父が買ってくれた童謡のレコードをよく聴いていました。今でも「花嫁人形」などを聴くと、心が涙でむせびます。
♪金襴緞子の帯しめながら 花嫁御寮はなぜ泣くのだろう・・・
ただ、幼い頃のそのような経験が影響したためなのでしょうか。弊害(?)もありました。
小学校から思春期を経て大人になるまで、歌の趣味が周囲とどうも違うのです。
小学校の時は、音楽の授業で「ドナドナ」(♪ドナドナドナドナ 売られてゆくよ…)とか「びわ」(♪びわは 優しい木の実だから…)などの静かでうら寂しい音楽が好きと言って、ちょっと浮きました。
中学校の時は、周りが小泉今日子だ、堀ちえみだ、中森明菜だと騒いでいるときに、「やっぱり岩崎宏美でしょ」と言って、かなり奇異な目で見られました。
大人になってカラオケに行くようになっても、乗りのいい歌が続く中で、一人しんみりとバラードなんかを歌って、ドン引きされました。
まさに、「三つ子の魂 百まで」だなあと思っています。
ただ、もう中年まっただ中になると、体力と気力の衰えからか、友達や同僚も、しだいに演歌や渋めの歌へと好みが移ってきているようです。私は心の中で、「ふっ、やっと時代が自分に追いついてきたか。」とほくそ笑んでいます。