カント、ヘーゲル、ゲーテ、シラー、トーマス・マン、バッハ、ベートーベン、マルクス、マックス・ウェーバー・・・。そうそうたる教養市民層を誇りながら、ドイツは第一次世界大戦への道を一直線に進んでいきました。
一方で、同じように教養市民層が国民を寡頭支配していたイギリスでしたが、こちらは、猪突猛進のドイツとは違い、政治的な成熟を果たしました。
この両者の違いの原因を、藤原正彦さんは「ユーモア」に求めています。
ユーモアを生むには、いったん自らを今ある状況から一歩だけ退き、永遠の光の中で俯瞰するということが必要です。これは現況への没入を忌避するということであり、バランス感覚につながります。イギリス人には「他人と違うことは格好いい」という文化がありますが、これは自分が付和雷同していない、バランス感覚を保っているという証拠だから格好いいのです。
(藤原正彦、『国家と教養』より)
・・・と堅苦しい話を進めてきながら、ここで思い出しました。皇后様ご推薦のユーモア小説『ジーヴズ』シリーズです。
『ジーヴズの事件簿・才知縦横の巻』はコチラ
『ジーヴズの事件簿・大胆不敵の巻』はコチラ
ジェントルマンの格式を感じさせながら、ちょっとニヒルでクールで、そしてユーモアを感じさせるジーヴズ。『ジーヴズ』シリーズは、ただおもしろいだけではなく、イギリス社会の味わいを描いた、いわば“格好いい”イギリス社会の縮図なのでしょう。
そう考えてみると、ただのユーモア小説と思っていたこの本が、急に格調高く見えてきました。
作者P・G・ウッドハウスさん。お見それいたしました。
| 国家と教養 (新潮新書) [ 藤原 正彦 ]
814円
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