汽笛とともに、出発 ─映画『くちびるに歌を』─ | 出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

「披沙揀金」―砂をより分けて金を取り出す、の意。
日常出会う砂金のような言葉たちを集めました。

 よよぎこうへいさんが、映画『くちびるに歌を』を紹介してくださっていました。長崎の五島列島を舞台にした、素朴さが心にしみてくる映画でした。

 映画を見ながら、新年最初のブログは、この映画を取り上げたいという思いが強まりました。

 

 天才ピアニストと言われながら、ピアノが弾けなくなってしまった柏木ユリ。

 父親に捨てられた中学生・仲村ナズナ。

 二人は、合唱部の顧問と生徒として出会います。

 悲しい過去を背負った二人の背中を押したのは、「汽笛」でした。

 

先生、知ってますか?

船の汽笛の音は「ド」の音って。

昔、お母さんが教えてくれたと。

「船の汽笛で、長い音2回は出発の合図。

 ナズナ、泣かんとよ。前進、前進。」

 

 過去を思い出したナズナは、音楽室を飛び出します。

 ナズナが去った後、柏木先生は一人ピアノの前に座り、そっと鍵盤に指をおろします。そしてベートーベンのピアノソナタを奏で始めるのでした。

 そのピアノの調べは、音楽室に、校舎の中に広がっていきます。ナズナが涙を流している屋上にも─。

 そして、二人は、新しい一歩を踏み出すのでした。

 

 

長い汽笛、2回。

 ボーー。

  ボーー。

新しい年に、前進、前進。