私たち家族と一緒にいた、羽生さん ─『直感力』(羽生善治)─ | 出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

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「披沙揀金」―砂をより分けて金を取り出す、の意。
日常出会う砂金のような言葉たちを集めました。

 将棋の羽生善治さんが、27年ぶりの無冠になったという記事が、今日の新聞各紙に取り上げられていました。

 

 私は、小学生の時に父から将棋を教わり、息子が小学生の時に将棋を教えました。

 息子は、毎週日曜日のNHK杯将棋トーナメントをテレビで見ながら、めきめきと腕を上げていきました。つられて将棋を見るようになった妻は中村太地さん(イケメン棋士)のファンになり、まだ幼かった娘は知らず知らずのうちに棋譜の読み上げを覚えていました。

 

 そんな家族の中で、羽生さんは別格でした。

 勝つのが当然の人、負けてはならない人でした。

 

 私の書棚に、羽生さんの本があります。

 

 自分が想定した、その通りでは面白くない。自分自身、思う通りにならないのが理想だ。

 計画通りだとか、自分の構想通りだとか、ビジョン通りだとかいうことよりも、それを超えた意外性だとか偶然性、アクシデント、そういうあれこれの混濁したものを、併せ呑みながらてくてくと歩んでいくのが一番いいかたちなのではないかと思っている。

 変わっていく、変化し続ける自分を、納得しながら楽しむ。

 そうした自分から、その時々に浮かび上がってくるものを楽しみながら進んでいくことを、できる限り続けたいと思っている。

  (羽生善治、『直感力』より)

 

 私たち家族は、羽生さんの熱狂的なファンというほどではありません。でも、思い返してみるとこの10年くらいの間、羽生さんは私たちのそばに、さりげなくいてくれたように感じるのです。

 だから、私たち家族は、羽生さんが再び「浮かび上がってくる」ことを楽しみにしています。

 

 がんばって。羽生さん。