「サンタクロースは、ぜったいにおる! だって、朝起きたらプレゼントが置いてあったのに! それに、お父さんもお母さんも『サンタさんが来てくれたんやな』って言よったし。」
今思えば、非常に乏しい根拠で力説していた、幼い頃の自分。
青春時代には、
「今年のクリスマス、だれか一緒に過ごしてくれるかわいい彼女おらんかなあ。」
と男友達とぼやいていました。
そしていつしか、サンタ側になっていました。
でも、どの時期も、クリスマスは夢をくれました。
何かをもらうにしても、何かを与えるにしても、人を幸せな気持ちにしてくれます。
サンタクロースがだれかを知ってしまった後でも。
─サンタクロースその人は、いつかその子の心の外へ出ていってしまうだろう。だがサンタクロースが占めていた心の空間は、その子の心の中に残る。この空間がある限り、人は成長に従って、サンタクロースに代わる新しい住人を、ここに迎えいれることができる。この空間、この収容能力、つまり目に見えないものを信じるという心の働きが、人間の精神生活のあらゆる面でどんなに重要かはいうまでもない─
(松岡享子、『サンタクロースの部屋』より)