夕暮れはもの悲しいもの、せつないもの。
夕暮れがなければ、こんな寂しさを味わわなくていいのに、とさえ思ってしまいます。
特に楽しかった休日の夕暮れは、ひときわその思いが強まります。
でも、カズオ・イシグロさんの『日の名残り』に、次のような一節もあります。
しばらく前までこのベンチにすわり、私と奇妙な問答を交わしていったその男は、私に向かい、夕方こそ1日でいちばんいい時間だ、と断言したのです。
「人生、楽しまなくっちゃ。夕方が1日でいちばんいい時間なんだ。脚を伸ばして、のんびりするのさ。夕方がいちばんいい。わしはそう思う。」
決してもう若くはない、隠退している男の言葉です。ならば、なおさら夕暮れの寂しさは身に沁みるのではないかと思うのですが・・・。
どうやら、この言葉は、この男の前向きさから生まれてきているようです。
「明日はもっといい日」という前向きな気持ちが、夕暮れを喜び、味わい、楽しむ余裕につながっているように思えます。
最近の自分を振り返ると、休日も昼下がりになると、すでに1日の終わりの予感がして、少し憂鬱になっていました。これだと、およそ1日の半分は楽しめていない状態になってしまっています。
そうではなくて、昼間、思う存分楽しみ、夕方、「ああ、楽しかった!」とちょっと一息つきながら、「明日はもっといい日になる!」と期待する。そんな自分に変えていきたいな、と思いました。
せっかく、この言葉に出会ったのですから。