大学生のころ、レンタルビデオで観た映画。
難病患者・レナードが、投薬の効果により、しばらくの間だけ日常生活を営めるようになるものの、また、しだいに動けない状態にかえっていく。その無情さに涙したものでした。
その映画を、30年ぶりに、もう一度観てみました。
通常の生活を送れるようになったレナードは、一人の女性に恋をします。いつまた動けなくなるかもしれない、その限られた時間の中の、まさしく必死の恋です。
しかし、病は確実にレナードの脳を蝕んでいきます。
激しい痙攣で、通常の生活を営むことがもはや困難になったレナードは、病院の食堂で彼女に別れを告げます。
彼女は無言で、立ち去ろうとするレナードの手を取り、静かにダンスをエスコートします。
周りにいた患者たちも、黙って微笑み、二人を見守ります。「ぼくは踊ったことがないんだ。」と言うレナードの、生涯にたった一人の恋人との、生涯に一度のダンスです。
ダンスを終えた彼女は、病院を後にします。
窓からそっと彼女を見送るレナード。小さくなっていく彼女。それは、動き、話し、恋することのできた最高の時間との別れでもありました。この無言の場面は、その悲しみを、やるせなさを、言葉以上に切々と伝えかけてきました。
私のブログは、言葉をすくいあげるのがその務め。
この映画の中でも、たくさんの心打つ言葉がありました。
でも、もっとも心に残ったのは、この無言のダンスシーン…言葉のない場面でした。