一心不乱に地面を耕すクマ。ウサギが来ても、モグラが来ても、
「ぼく、いそがしいんだ」
「おまえ、たね ほじくると、あたまから くっちゃうぞ」
などと素っ気なく追い返します。
でも、クマが育てていたのは、みんなにプレゼントするためのお花。
クマは、一面に咲いた花を摘んでみんなに届けます。
たくさんの動物たちが喜ぶ中、その一部始終を見ていたフクロウは、花を届けに来たクマに言います。
「ぼく ねるの。それに ぼく、はなのしゅみは ない。それ きみに あげる」
クマはつぶやきます。
「ふっふっふ、みんな よろこんだな。
でも、ふくろうって、いいやつだな」
フクロウの真意は、クマに伝わります。
一見すると冷たい言葉。でも、その裏にはクマやフクロウの、友達への思いが隠されています。
子どもたちが、言葉の表面と心とは異なることがあるということを学ぶのは、いつごろからなのでしょうか。
「注射なんて、痛くない!」と強がる友達を見た時でしょうか。
「〇〇君なんて嫌い!」なんて恋する目で言う女ごころを知った時でしょうか。
言葉で、すべてを伝えることはできません。しかし、言葉の受け手が、言葉の背景に思いを馳せることはできるはずです。そして、絵本や小説は、そんな想像力がどんどんふくらむ場だと思うのです。