斎場の真ん前に建つうどん屋『峠うどん』。故人との別れを終え、やりきれない思いを抱えた人が立ち寄るお店。
中学生のよし子は、『峠うどん』を営むおじいちゃんとおばあちゃんの手伝いをしています。
一方、よし子のお父さんとお母さんは、共に小学校の先生。「人の死のなまなましさを見せつけるのは早い」という理由で、よし子が『峠うどん』を手伝うことに、あまりいい顔をしません。
ある時、お父さんは、おばあちゃんに「人が死んだとか、霊柩車がどうだとか、そんなのどうでもいいじゃないか。今は、学校の勉強をしっかりやる時期なんだからな」と言います。
おばあちゃんは、答えます。
「ひとの生き死にってのは、一生モノの勉強だよ。そんなこともわからないで、あんた、よく学校の先生なんかやってるね」
私が、小学校教員の採用試験を受けた時、集団面接で、面接官から「教師として一番大切なことはなんだと思いますか?」と質問されました。
私は、「教師の人間性だと思います。」と答えました。何人かが、それぞれの思いを答える中、ある一人が、こう言いました。
「命の大切さを教えることです。」
たしかに大切なことですが、なぜそんなあまりにも大きなことが出てくるのか、少し違和感を感じたまま、でも、25年間、ずっと心に残っていました。
生きること、死んでしまうことにかかわる問いは、簡単に答えの出るものではありません。誰もはっきりとは教えてくれません。
それでも、それは、一生かけて考え続けていかなければいけない問いです。いや、悩み、考えていくことこそが生きることかもしれません。
今日、『峠うどん物語』の上巻を読み終えました。明日から、下巻を読みながら、答えは出ずとも、生きること、死んでしまうということについて、考えていこうと思います。