今、テレビを観ていたら、昨日の羽生結弦選手のショート・プログラムの演技が流れていました。解説者が、説明を添えました。
「曲は、羽生結弦選手憧れのジョニー・ウィアーがかつて使った『秋によせて』。羽生選手は、『この曲に合わせて踊っていた幼い頃を思い出しながら滑りたい』と言っておりました。」
ちょうど、今読んでいる本が、朝井まかてさんの『眩(くらら)』。葛飾北斎の娘である絵師・葛飾応為の生涯を描いた小説です。
この本の中に、次のような一節がありました。
・・・(略)そして思い出したのである。親父どのの大きな胡坐の中で筆を持つことが愉しくて嬉しくて仕方がなかった、幼い日々を。
日本の期待を背負って演技する羽生結弦選手。北斎の娘であるという圧力を感じながら描き続ける葛飾応為。どちらも、いくら好きな道とは言え、苦しいことも多々あったはずです。
しかし、その苦しさから救ってくれるのが、幼いころの思い出。ただひたすらに、それをしていることが楽しかった日々─。
ふと思いました。
生きていく中で、つらい時、悩んだ時、行き詰まった時、そこから救ってくれるものが、もう一つあるのではないか。
それは、幼いころの思いや感性をよみがえらせてくれる「絵本」なのではないか、と。