動物たちの自然な関係 ─『きみ、なにがすき?』(はせがわさとみ)─ | 出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

「披沙揀金」―砂をより分けて金を取り出す、の意。
日常出会う砂金のような言葉たちを集めました。

 「にわに なにか つくりたいなあ」と考えるあなぐまさん。

 

 まず、仲良しのこぶたさんのために、ジャガイモを作りました。そして、それを届けに行く途中、こぶたさんと出会います。

 こぶたさんは、「自分の畑でジャガイモがたくさん取れたから、ちょうど君の家に持っていくところだったんだよ。」とあなぐまさんに言います。

 

 あなぐまさんは、次に、大好きなりすさんのために、リンゴの木を植えます。そして、それを届けに行く途中、りすさんと出会います。

 りすさんは、「裏庭でリンゴがたくさん取れたから、あなぐまにもあげるね」とあなぐまさんに言います。

 

 その後、あなぐまさんは、うさぎさんにニンジンを、はりねずみさんにキイチゴを贈ろうとしますが、同じ結果になります。

 何をしてもうまくいかないあなぐまさんは、部屋の隅で丸くなり、すねたようにつぶやきます。

「せっかく いいもの つくろうと おもったのに。

 じゃがいもも、りんごも、にんじんも、きいちごも、

 ぼくの なかよしの すきなものは、ぜんぶ だめ。

 ぼくの にわで、なにつくったら いいんだい?

 なにしたら、きみ うれしいんだい?」

 

 そこでのはりねずみさんの答えが、これ。

「そりゃあ あなぐま、きみの すきなものを なんでも。」

 

 そこで、あなぐまさんは、「自分の好きなもの」を作ります。そして、その「自分の好きなもの」が、あなぐまさんの幸せをもたらします。

 あなぐまさんの庭には、今日も友達がやってきて、にぎやかなおしゃべりが聞こえています。

  (はせがわさとみ、『きみ、なにがすき?』、あかね書房、2017年)

 

 だれかのために行動できることは、とても素晴らしいことです。

 でも、人は(少なくとも私は)、聖人君子ではありませんから、そのような行動をとり続けることは難しいことですし、どこかで無理が来るように思うのです。だから、「自分の好きなものでいい」というはりねずみさんの言葉に、ほっと安心するのです。

 このお話に登場する動物たちは、みんな「自分の好きなもの」を作り、それを互いに受け入れながら、温かい関係を築いています。

 そんな自然な関係が、周りに満ちればいいなあと思っています。