一ぴきのでんでんむしは、ある日、大変なことに気がつきます。
「わたしの せなかの からの なかには かなしみが いっぱい つまって いるでは ないか」
やり場のない思いを抱えて、でんでんむしは友達を訪ねます。
「わたしは もう いきて いられません」
しかし、どの友達も、同じように答えます。
「あなたばかりでは ありません。わたしの せなかにも かなしみは いっぱいです」
とうとう、でんでんむしは気が付きます。
「かなしみは だれでも もって いるのだ。わたしばかりでは ないのだ。わたしは わたしの かなしみを こらえて いかなきゃ ならない」
新美南吉さんの童話「でんでんむしのかなしみ」です。皇后さまが、昔、紹介されたことでも有名です。
今日の読売新聞に、皇后さまのこんな言葉が取り上げられていました。
「読書は人生のすべてが、決して単純でないことを教えてくれました。私たちは、複雑さに耐えて生きていかなければならないということ」
きっと皇后さまだって、かなしみや悩みを抱えて生きていらっしゃる。でも、それをからに詰め込んで、人には笑顔を与えてくださる。そこに人間の豊かさを感じ、そして、紡ぎだされる言葉も豊かに、人の心に響くのでしょう。
だから、この新聞記事の見出しも、こう付けられています。
「心揺さぶる 豊かな言葉」