碩学・池澤夏樹さんが「新聞の活用」「本の探しかた」などについて指南する書。
この本の中に、次のような一節があります。
お小遣いを持った子供たちが店頭で駄菓子の中から何を買おうかと迷っている。それを見ながら初老の店主がぽつりと言う
── 「迷うのが喜び」。
この箴言めいた言葉をしばしば思い出す。
家を建てる時でも、車を買う時でも、いや、そんなに大きなものでなくて、例えば椅子を買うとか、花を買うとか、ささやかな自分のお気に入りを見つける時でも、迷う時間は楽しいものです。
それは、本を買う時も同じです。
私にとって、一冊の本を読了する喜びは、同時に「本屋に行って新しい本を買おう。」「次は何の本を読もう」「どんな本と出会えるだろう」という喜びをわき起こします。
そして、ブログを始めた今は、「どの本をブログで伝えよう」という喜びも生まれました。
と思いながら、池澤さんの文章の続きを読んでみると、実は池澤さんも、書評するに当たって、本を選ぶ喜び、それを世に紹介する喜びを味わっているということでした。
池澤さんに0.01歩ぐらいだけ、お近付きできたような気がしました。