美徳の承認その36/52
【手伝い:Helpfulness】

■手伝いとは

手伝いとは
助けを申し出る力です。

手伝いとは
相手が断ることができる形で
おせっかいしてみたり
余計な世話を焼いてみたり
することです。

手伝いとは
相手のできないことの
手助けを申し出る力です。

そうして相手が
生きるのに役立つ道を
進めるように
後押ししてあげる力です。

手伝いは
あなたも私も
誰もが生まれながらに
持っている力です。

困っている人を前に
手助けを申し出ないのは
手伝いを持っていないわけではなく
ただ使っていないだけです。

もしかすると
手伝いよりも
信頼や尊敬を使って
相手が自分でする機会を
見守っているのかもしれません。

手伝いの力は
あらゆる人が
生まれたときから
使える力です。


■相手のできないこと

相手のできないことは
相手の課題です。

自分が決めるものではなく
相手が決めることです。

それを自分が
「相手にできないだろう」と
推測してはたらきかけるので、
そのやり方によっては
失礼になることもあります。

そのため相手の課題であることを
十分に配慮してはたらきかける
必要があります。

そして、そのできない予測は
「相手にそれをする能力がない」
と見るものと、
「相手にそれをする時間がない」
と見るもとがあります。

例えば外国人に話しかけられて
その人が外国語を話せない状況で
自分がその外国語を話せるなら
「相手にそれをする能力がない」と
すぐにわかります。

「私が話してみていいですか?」と
相手の許可を得た上で
外国人と話すなら
相手が恥ずかしい思いをする可能性は
低くなります。

逆に相手の許可なく話したら
相手は「自分の無能」を感じて
恥ずかしくなったり
肩身の狭い思いをすることに
なるかもしれませんから。

また、例えば
母親が夕食の支度をしていて
そこに宅急便が届いた状況。

炒め物をしていて
手が離せないように見えたら
「私が受け取ってくるね」と
申し出ることで
調理中の母親は助かりそうです。

申し出をしないで
宅急便を受け取りに行こうとしたら
母親も受け取ろうと
調理の手を止めて
インターホンに向かうかもしれませんから。

また、例えば
きょうだいが資格などの試験の受験を
翌日にする日には
家の中で静かにすごしたりして
受験に集中できるような
環境づくりに協力したり、

食事の後のあとかたづけを
「今日は私がやってもいい?」と
申し出ることも役に立ちそうです。

また、例えば
仕事で家を空けることが多いときは
家族に「何か困ってない?大丈夫?」と
訊いてみることも
家族の役に立ちそうです。

仕事が忙しいから
家族が我慢するのが当然の態度だと
家の空気が重たくなりそうです。


■課題の所有者を尊重する

相手を助けることが
すなわち「善」とはなりません。

相手が自分の力だけで
成し遂げたいと思っているところに
「あなたの役に立ちたい」と
割って入ってしまったら
ただ迷惑になるだけです。

さらに
「助けようとしたのに
そんな言い方しなくても」と
相手を責めてしまったら
なお迷惑です。

そしてさらに
「悪意はないのに
なんでそんな風に言うの?」など
モメてしまうなら
迷惑どころか
相手の邪魔をしているだけに
なってしまいます。

助けを申し出て
相手がそれを断ったなら
「何もしない」が
相手の役に立つということなので
「何もしない」をすることです。


相手を助けたいなら
自分の手助けが
相手の役に立つかどうかを
事前に相手に確認することが
大切です。

重たい荷物を持っている人に
「お手伝いしてもいいですか?」と
訊いたら、

「貴重品を運んでいるので
これは私が運びます」と
答えるかもしれませんし、

「ありがとう、助かります。
それでは半分持ってください」と
答えるかもしれません。

それは確認しないと
わからないことです。

反対に
助けないことが
すなわち「悪」と
なることもありません。

助けることで
自分が負担できない犠牲を
払うことになる場合には
助けられない状況です。

相手が自分でできることなのに
助けを求めてきた場合には
それを助けることが
相手の自立を妨げる場合は
助けない方が相手の役に
立つこともあります。

相手の課題と
自分の課題を
整理整頓して
その課題の所有者しか
その課題を決めることが
できないことを考慮に入れた上で
丁寧に接することで
手伝いはその真価を発揮します。


■自分にもおせっかいする

一人で悩んで
どうしようと迷い続けているなら
悩んでいる自分に
手伝いの自分が
助けを試みることです。

かわいそうな自分
悪いあの人
それを出し尽くしたら
「これからどうするか」が
出てきます。

自分の中から
湧いてくるものを整理して
今の自分にすると
良さそうなアイデアを
実際に行動に移してみることです。

話を聞いてくれる人に
話をするだけで
自分の内面が整理されて
「これからどうするか」が
見えてくることもあります。

何かをするよりも
たっぷりと休息をとることで
「これからどうするか」が
見えてくることもあります。

すてきな景色を見に行ったり
清々しく呼吸ができる場所に行ったり
運動して力を解放してみたりすると
「これからどうするか」が
見えてくることもあります。

悩んでる、という枠から
一度外れて、
また入ると
見えるものが違ってくることも
よくあります。

そう自分に
促すことも
手伝いの力です。


■共に笑い、泣き、困る

手伝いは
自分にできることを
相手の役に立つように
することです。

そのためには
相手に寄りそう心で
接することです。

相手にうれしいことがあったら
一緒によろこびます。

相手に悲しいことがあったら
一緒に悲しみます。

相手が困っていたら
一緒に困ります。

相手に問題があると見なして
その問題を解決してあげる
ことだけが手伝いでは
ありません。

そして
笑ったり
泣いたり
困ったりしていると
「これからどうするか」が
自然と見えてきます。

そうして
お互いがお互いを助けられると
一人ではできない
偉大なことを達成できます。



お読みいただき、
ありがとうございます。

プロコーチ9年目、常楽でした。



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