読書感想文の功罪 | 「国語教室 Hey Ho」安藤友里のブログ

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「国語教室 Hey Ho」代表の安藤が、思ったこと・考えたことを綴ります。「文章力をつける」教室を開いているのだから、自分も文章を鍛えないと、と思って書いてます。

夏休みの宿題で

「いちばん苦労する」読書感想文。
「いちばん苦労する夏休みの宿題は?」というアンケート結果で、
堂々の!?第一位だったという記事が、この前、新聞に載っていました。
 
小学校や中学校だけでなく、私が以前働いていた高校でも
毎年、宿題になっていました。
でも、小中高通じても「感想文の書き方」という授業を受けた人は
少ないのではないかと思います。

何をどう書けばよいか分からないのに「書け」と言われ、
せっかく書いたものを
「もうちょっとマシなこと書けないの?」
「そこじゃなく、肝心なことを書きなさい」
と真っ当だけど子どもにはよく分からないことでダメ出しされたり、
字の間違いを指摘されたり批判されたりショボーン
こうして「書く」ことに苦手意識を持つことと
読書嫌いを作ることが「罪」の部分。
 
それで、小学生のうちは
親が本を用意し書き始めまでのお膳立てが必要なことも多いし、
高校生はネット検索して丸写してへぺろなんてことも起こり得ます。

さらに「罪」なのは「コンクール」の存在です。
全国規模の、課題図書を決める機関が主催するものは「あり」で
評価は自信につながる「功」だと思うけど、
学校内で、担任の主観で選ぶものはどうなのかな?
以前勤めていた高校では、書いた「人」や、作品の「長さ」で選ぶ教師もいました。
盗作が見抜けなかったこともありました。
それを表彰するって、「害」だし「罪」だと感じていたのですが、
「学校の伝統」はなかなか変わりませんでした(笑)
 
では、読書感想文の宿題に「功」の要素はない? と聞かれると、
これは、とても私的な意見ですが
「親子の会話」のため、それも将来の「会話」のための「種まき」だと考えれば
いい機会だと思うのです。
親が「こんな本読んでほしいな」と思う本、
「この本を読んだら、この子は何を感じるのかな?」と気になる本、
そんな本を勧めてみて(でも、嫌がるなら無理はさせずに)
読んでみた後の感想を、お互いに伝え合います。
感想文には、その言ったことを書けばよくて、
「自分はこう思った、お母さん(お父さん)はこう言ってた」というふうに。
 
この「会話」から感想文が書けて、自分を否定されることがなければ
まず、子どもは嫌がりません。
それを毎年続けていると、学年が上がるにつれて
子どもと対等に話ができるようになってきます。
「あ、この子こんな価値観持ってるんだ」とか
「そこに引っかかるの?」とか。
普段、言葉にしない内面を垣間見ることもできます。
 
「国語の先生」の子どもなのにうちの子たちは
「読書感想文コンクール」で入賞したことは一度もないけれどてへぺろ
大人になった今、
読んで良かった本を勧め合ったり
観た映画の感想を言い合ったり
お互いの価値観を面白がる「会話」ができています。
大人になった親子で、そんな「会話」ができると楽しいですニコニコ
 
そこへ向かうための経験を、夏休みに親子ですること、
それが読書感想文の「功」の部分だと思います。