鳥山明とドラゴンボール | yunnkji1789のブログ

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鳥山明が亡くなったのは素直に驚いた。

漫画は、絵の上手さと画力の高さは別物だが、彼の画力の高さは本当に抜きん出ていた。

私は子どもの頃ドラゴンボールを見ていたが、大人になってから凄さがわかった。

手塚治虫も彼の画力を羨ましがっていたとが言われている。手塚は非常に負けず嫌いで人を滅多に褒めないが、本当に実力があると感じた人に対しては子ども相手でもムキになって対抗したらしい。新人の鳥山と初対面した時の第一声が、「初めまして」ではなく「僕だって描こうと思えば、君くらいの絵描けるんだからな!」だった。




会社を辞めてフリーターをしていた時に、金に困って賞金目当てで初めて描いた漫画が評価された、という漫画家になったきっかけのエピソードは有名だが、元々モデラーをしていたのが彼の画力の下地になってたのは間違いない。下の絵は彼自身がデザインしたフィギアのパッケージの絵だが、彼の画力の高さがよく分かる。大胆にデフォルメしているのに本当にリアルに感じる。写真のようなリアルな絵を描く人はたくさんいるがデフォルメしてもリアルな絵を掛ける人はなかなかいない。単に緻密で、人体デッサンが正しいだけでなんともならない。元々空間把握能力が高くて、人体やメカを立体造形物として造っていた経験でそれが磨かれたのではないだろうか。




しかし、彼の作品は画力だけではなく、ストーリーもかなりよくできている、と最近思うようになってきた。

ドラゴンボールなども、彼の意に反してどんどん延長されてしまったことは有名だし、ストーリーや設定もそれに応じて後付が繰り返されていた。

話に辻褄が合わなくなるから、一度死んだ人を次々に蘇らせて、ルールが際限なく追加されていた。

元々長いストーリーを考えるのが苦手で、行き当たりばったりが多いらしい。しかし、行き当たりばったりが上手い人もいる。鳥山は、今考えると別格だ。

子どもからすると、ただ次々に新しい敵が現れて戦っているだけにしか思っていなかったが、改めて見てみると、よくできている。

悟空が実は宇宙人だったって話は、後から付け足しでできた設定だったのだが、その設定ができたことで、実は悟空を育てた「じっちゃん」の方の悟飯がめちゃくちゃ優秀で、地球を救っていた事がわかる。

その後悟空は多くの良い人に囲まれて健やかに、優しく育つが、本来は野蛮な戦闘民族だった事がわかり、いかに悟空の周りの人が、もっと言えば人類が愛情深かったかがわかる。

悟空自身は地球を救おうとしているわけではなく、ただ強い相手と戦いたいという、サイヤ人特有の闘争本当に従って生きているだけなのだが、優しい人間たちに育てられたことで、サイヤ人のような野蛮な殺戮本能ではなく、強くなりたいという人間的な向上心として培われていくわけである。

悟空は、周りの人々に愛情を持ちながらも、どこかとらえどころのない、飄々とした雰囲気があり、そこらへんが、一般の人類とは違うメンタルを持っている一つの表現となっている。しかし、じっちゃんに対する愛情はずっと持っていて、それが突如、息子に同じ「悟飯」と名付けることで、やはり悟空の原点だった事が、再確認できる。

そして物語は地球人とサイヤ人の間の子である孫悟飯に引き継がれていく。

歯が浮く言い方をすれば、「愛が地球を救った」わけであり。実は孫悟空自体は、その単なる狂言回しに過ぎないとも言える。