花の降る午後 | 映画プログレ桜田淳子

映画プログレ桜田淳子

タイトルのテーマを中心に、好きなものを書き綴ります

監督:大森一樹 1989年

夫亡き後、神戸の高級レストラン「アヴィニョン」を守る若き女性オーナー甲斐典子(古手川祐子)と、その乗っ取りを企む悪女・荒木美沙(桜田淳子)との対決と確執を描く。美沙の執拗な攻撃により、スタッフが辞めたり襲われたりしたアヴィニョンは、遂に閉店に追い込まれる。それに対し、義弟の私立探偵や懇意にしている中国人に、美沙とその夫の背後を調査させる典子。そんな時、若い画家の卵・高見が典子の前に現れる。そして、高見の愛情やスタッフの情熱に後押しされ、典子は再びアヴィニョンをオープンさせる。だが、敵はアヴィニョンの隣で仕立屋を営む英国人の娘を誘拐、さらには放火と、強硬な手段に訴えてきた…。


桜田淳子が出番たっぷりであることに加え、第13回日本アカデミーで助演女優賞まで取ってしまった(因みに主演女優賞も本作から古手川祐子)というオマケまでついた名作。健気で快活で可愛らしくてエレガントでつい応援したくなってしまうほど古手川祐子の魅力が炸裂しているが、それもこれも桜田淳子演じる悪役の存在あってこそ。大胆なドレスに身を包み、ヒロインを陰険に追いつめてゆく憎ったらしさ全開の彼女の演技が、ストーリーにメリハリを与え、ドラマを支えている。

お話は、前半はトレンディ・ドラマとしてスタートする。両女優が競うように着飾るファッションや高級料理など、バブルな雰囲気を心ゆくまで堪能させてくれる。そして、後半に入ると、そこにサスペンスやアクションの要素が加わり、ググーっと盛り上がってゆく。神戸という土地柄やハイソな登場人物が醸し出すオサレ感と、その裏の顔としての「ここまでやっちゃうの?」的な振り切ったえげつなさとを、無理なくブレンドさせてしまう演出手腕は、さすが大森一樹監督である。「ゴジラVSビオランテ」直後の作品だけにノリノリだったのかもしれない。

ムラマツ・キャップ(小林昭二)が小悪党、ハヤタ(黒部進)が大悪党として登場しているのも、今見てみると、なんだか懐かしさ溢れる配役である。