メイドイン怖い話『真夜中の電気工事』 | せいぜいひまつぶしの小話

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5年目から創作系ブログとして新装開店しました。
色々と思うところ書いてます。講談社への抗議不買は一生続けます。
2022年12月からは小学館もリストに加わりました。
「人を選ぶ」とはつまり「自分は選ばれた」ということです。

むか~し、むかし。
ぼくがまだ小さかった頃、
近所に住んでいた隠居のじいさんは、
ぼくに色々な昔話を聞かせてくれました。

という(どういう)わけで、突然ですがメイドイン昔話のお時間です。
ここ最近とても暑いので、今回は涼しくなるようなこわ~い話を選びました。

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東京都在住 Aさんの話

 8月某日、東京でも30℃越えの猛暑日が続いた、ある日のことです。

 Aさんは電気工事の仕事をしているんですが、その頃はとある商業ビルの一角で、
 9月入居のテナントに備えて、Aさんの勤めている会社が改修を請け負っていました。

 そしてその日は、Aさんの受け持ちである電気配線の工事が入っていたんだが、
 連日の猛暑に頭がボーッとしてたAさんは、どうやら配線をミスってしまったようで、
 電気のスイッチを入れてもちっとも明かりがつかない。

 点検と配線のやり直しに手間取っているうちに、外はスッカリ暗くなってしまった。
 Aさんは「自分の責任だから」と、仲間を先に帰した後は残りの配線作業を1人でこう、
 暗いな~ヤダな~怖いな~なんて思いながらやっつけていた。

 東京の大都会も繁華街を離れてしまえば、ときどき車の走る音がするくらいで、夜は
 意外と静かなモンです。しかもまだ配線が終わってないから、明かりをつけることも
 出来ない。他のテナントも、残業で居残ってるような人は誰もいなくなっていた。
 おまけに床はカーペットだから足音もしない。シーンと静まり返った真っ暗闇の中、
 肩に引っ掛けた懐中電灯で手元を照らしながらAさんが作業を進めていると、

パチンッ!

 突然、何かが弾けるような音がした。

 何の音だろうと思って、辺りを見回しても誰もいない。いたとしても自分以外には、
 せいぜい地下の事務所に詰めてる警備の人くらいなんだが、わざわざこんなとこまで
 様子を見に来たにしても、それならそれで声ぐらいかけてくるはずだ。

 なんだろうなと気にはなったがいい加減夜も遅いし、早く終わらせたかったから、
 Aさんはそのまま作業を続行した。

パチンッ!

 するとまた突然、さっきと同じ何かが弾けるような音がした。でも周りは誰もいない。

パチンッ!

パチンッ!

 その後も、ときどき思い出したよ~に同じ音が聞こえてくる。周りは静かだから
 音は余計に響いてくる。最初のうちは気味悪がっていたAさんだが、実害は何も
 無いからすぐに慣れてしまって、いい加減うっとーしいなぐらいに思っていた。

 それでようやく全部の配線作業が終わる頃には、時計の針は夜中の2時を指していた。
 ずいぶんと遅くなったが、これで後はブレーカー上げてスイッチ入れて、明かりが
 つくのを確認したらようやく帰れるぞと、Aさんが解放感に浮かれながらフロアの隅に
 ある配電盤に懐中電灯を向けた瞬間、Aさんは顔からサアッ…と、血の気が引いた。

 Aさん急にガタガタガタガタ震えちゃって、顔はもう顔面蒼白で汗びっしょり。
 そこを巡回に来ていた警備の人がAさんの尋常じゃない様子に気が付いて、
 どうしたんですかって、声をかけてきた。

 震える指先でAさんが指差した先には、配電盤があった。別にそれだけ見れば
 なんてことはない。一般家庭なんかでも目にするような、ごく普通の配電盤でした。

 いったい何を見たのかと思って、警備の人が恐る恐る配電盤に近づいてみると、

 

 ブレーカーが入ったままになっていたんです。
 配線を繋ぎ直している間中、ず~…っとね。


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パチンッ!というあの音は、配線と端子の間でスパークしてる音だったんですね。
一歩間違えれば感電事故になっていたかもしれないという、
身の毛もよだつ恐怖の物語でございました。

え?趣旨が違うって? ちゃんと怖い話じゃないですか。

自分の中では稲川淳二リスペクトのつもりでやってみたんですが、
いざやってみると完全にBBゴローでした(苦笑)。

なんでしたら“こえのブログ”で話を読んでくれても構いませんが、
その際は是非コメントにてご一報ください。…誰に言ってンだか。

〈終わり〉

 

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