むか~し、むかし。
ぼくがまだ小さかった頃、
近所に住んでいた隠居のじいさんは、
ぼくに色々な昔話を聞かせてくれました。
という(どういう)わけで、突然ですがメイドイン昔話のお時間です。
ここ最近とても暑いので、今回は涼しくなるようなこわ~い話を選びました。
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東京都在住 Aさんの話
8月某日、東京でも30℃越えの猛暑日が続いた、ある日のことです。
Aさんは電気工事の仕事をしているんですが、その頃はとある商業ビルの一角で、
9月入居のテナントに備えて、Aさんの勤めている会社が改修を請け負っていました。
そしてその日は、Aさんの受け持ちである電気配線の工事が入っていたんだが、
連日の猛暑に頭がボーッとしてたAさんは、どうやら配線をミスってしまったようで、
電気のスイッチを入れてもちっとも明かりがつかない。
点検と配線のやり直しに手間取っているうちに、外はスッカリ暗くなってしまった。
Aさんは「自分の責任だから」と、仲間を先に帰した後は残りの配線作業を1人でこう、
暗いな~ヤダな~怖いな~なんて思いながらやっつけていた。
東京の大都会も繁華街を離れてしまえば、ときどき車の走る音がするくらいで、夜は
意外と静かなモンです。しかもまだ配線が終わってないから、明かりをつけることも
出来ない。他のテナントも、残業で居残ってるような人は誰もいなくなっていた。
おまけに床はカーペットだから足音もしない。シーンと静まり返った真っ暗闇の中、
肩に引っ掛けた懐中電灯で手元を照らしながらAさんが作業を進めていると、
パチンッ!
突然、何かが弾けるような音がした。
何の音だろうと思って、辺りを見回しても誰もいない。いたとしても自分以外には、
せいぜい地下の事務所に詰めてる警備の人くらいなんだが、わざわざこんなとこまで
様子を見に来たにしても、それならそれで声ぐらいかけてくるはずだ。
なんだろうなと気にはなったがいい加減夜も遅いし、早く終わらせたかったから、
Aさんはそのまま作業を続行した。
パチンッ!
するとまた突然、さっきと同じ何かが弾けるような音がした。でも周りは誰もいない。
パチンッ!
パチンッ!
その後も、ときどき思い出したよ~に同じ音が聞こえてくる。周りは静かだから
音は余計に響いてくる。最初のうちは気味悪がっていたAさんだが、実害は何も
無いからすぐに慣れてしまって、いい加減うっとーしいなぐらいに思っていた。
それでようやく全部の配線作業が終わる頃には、時計の針は夜中の2時を指していた。
ずいぶんと遅くなったが、これで後はブレーカー上げてスイッチ入れて、明かりが
つくのを確認したらようやく帰れるぞと、Aさんが解放感に浮かれながらフロアの隅に
ある配電盤に懐中電灯を向けた瞬間、Aさんは顔からサアッ…と、血の気が引いた。
Aさん急にガタガタガタガタ震えちゃって、顔はもう顔面蒼白で汗びっしょり。
そこを巡回に来ていた警備の人がAさんの尋常じゃない様子に気が付いて、
どうしたんですかって、声をかけてきた。
震える指先でAさんが指差した先には、配電盤があった。別にそれだけ見れば
なんてことはない。一般家庭なんかでも目にするような、ごく普通の配電盤でした。
いったい何を見たのかと思って、警備の人が恐る恐る配電盤に近づいてみると、
ブレーカーが入ったままになっていたんです。
配線を繋ぎ直している間中、ず~…っとね。
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パチンッ!というあの音は、配線と端子の間でスパークしてる音だったんですね。
一歩間違えれば感電事故になっていたかもしれないという、
身の毛もよだつ恐怖の物語でございました。
え?趣旨が違うって? ちゃんと怖い話じゃないですか。
自分の中では稲川淳二リスペクトのつもりでやってみたんですが、
いざやってみると完全にBBゴローでした(苦笑)。
なんでしたら“こえのブログ”で話を読んでくれても構いませんが、
その際は是非コメントにてご一報ください。…誰に言ってンだか。
〈終わり〉