過去改変テーマ・前編
『過去改変テーマ』での引き伸ばしは、手段が限られています。
そしてどんな手を使うにせよ、タイムパラドックスがややこしくなるのは避けられません。
続ければ続けるほど誰の手にも負えなくなるのは、火を見るより明らかです。
長続きさせたところで、良いことなんか一つもありません。
しかもそれが“結局何も変えられない”という
最低最悪のオチに向かうなら尚のことです。
物語の基本はハッピーエンドです。そして『過去改変テーマ』でのハッピーエンドは、
“すべての運命が変わってついでに八方丸く収まってメデタシメデタシ”と。
これ以外にありえません（他にある？）。
登場人物（≒主人公）が“過去を変えること”を目的として動く以上はそれ相応の、
読者視聴者の理解と共感を得られるだけの理由や動機がキチンと設定・描写されています。
眼鏡の地位向上のためにコンタクトレンズの発明者を殺すとかそういうのは
阻止されて当然ですが、それはツッコミどころがあってなんぼのギャグでやってるから
認められているのであって、真面目に話を作る分には邪魔される筋合いなんかありません。
あと、負けて当然の太平洋戦争で日本を勝たせるなんてのも阻止されて結構です。
やっていいのはせいぜい無駄死にを減らすぐらいのことです。
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さらに大真面目に返すなら、眼鏡そのものの品質向上や、相対的に眼鏡の地位を貶める
コンタクトレンズＣＭに対する厳重抗議や名誉棄損による訴えを起こすなど、暗殺という
非常手段に頼らずとも対抗する手段は他にいくらでもあります。
ついでに言えば「歴史を変えるのは禁じ手」とかいうタイムトラベラーの反吐が出るような
正論なんぞに頼らなくとも、理詰めで説得出来る材料が十分にあれば“過去を変えること”が
失敗するオチになるのは構わないと思っています。
ギャグやコメディに真剣な返しは本来ご法度ですが、
カルト信者の逃げ場をツブすためにあえてやってます。
行き当たりばったりで引き延ばしているうちにタイムパラドックスがややこしくなって
手に負えなくなるのか、あるいは「過去に囚われず未来に目を向けることが云々」とか
なんとか自分で書いててもムカつく現状無視のキレイごとでエラそーに
何様のつもりで上から目線のお説教がしてみたくなるのかどうかは知りませんが、
ンなご高説を垂れるのにわざわざ時間の不可逆性をひっくり返す必要があるでしょうか？
それに何より読者視聴者の理解と共感を得られるだけの理由や動機に加え、
それをやり直すチャンスと手段を用意するということは、ハッピーエンドを期待させる
“煽り”に他なりません。
“結局何も変えられない”のは『過去改変テーマ』にとって
最低最悪のオチである、と定義するのはまさにそこでして、
そんなものは客の期待だけでなく、登場人物（≒主人公）の意思と行動を作者（＝神）の
都合で一方的に踏みにじる卑劣な裏切りと詐欺行為でしかありません。
だったら最初からやるな。
どんな屁理屈並べ立てようが“結局何も変えられない”のは絶対に許せません。
ただ作者の逃げでも詐欺でも一応それなりの体裁は整えなきゃならないわけですが、
“結局何も変えられない”ことへのこじつけとして度々目にする『時間の強制力』とか
『時空連続体』とか『親殺しのパラドックス』で『量子力学』がどうのこうのと、
どこのＳＦから引っ張ってるのかロクに知りもしねーくせに使ってるのがミエミエな上に、
そもそも現段階でタイムスリップや過去改変を実現したヤツがいるわけでもないのだから、
『親殺しのパラドックス』とかそういうのは結局どこまでいっても単なる仮定と仮説の
積み重ねであり、実行前の段階で想像し得る問題と障害の話でしかありません。
なので「だからできねーんだよ」とドヤるために振りかざすのは間違っているし、
物語の中ではそれらの問題と障害は何らかの方法で解消されていると考えるべきでしょう。
実際にやってみないと誰も確実なことなんか言えないんです。
それともう一つ、改変を諦めた登場人物がよく口にするムカつく言葉で
「何度やり直してもダメだった」というのがありますが、
あれは“作者の足りないオツムの中で”という断り書きが隠れていることを、
キチンと覚えておきましょう。目にする度に思い出すのでもいいです。
もし自分なら「何度もやり直した中身を全部見せろ」と返してやってるとこです。
どうせ出来ないだろうけどね(笑)
（なので『バタフライ・エフェクト』も個人的に好きじゃないです）
というわけでまとめに入ります。
・『過去改変テーマ』の物語は短くまとめるべし、
見る前にまずはオチを確認してからにしよう。
・（過去を変えることに）ウジウジするな。
・“結局何も変えられない”なら最初からやるな。
〈終わり〉