●満州裏史~甘粕正彦と岸信介が背負ったもの @太田尚樹 | ★50歳からの勉強道~読書録★

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本は友達。一冊一冊を大切に記憶に留めておきたい。

甘粕正彦。
1923年(大正12)、関東大震災のどさくさに
社会主義者大杉栄を殺害した、という
悪名高き憲兵。

。。と、誰もが思っているけれど、
本当は違うらしい。


陸軍の犯行を一人で被って牢屋に入り、
謂れなき汚名を、生涯一身に背負う。
そして、出所後は満州の「夜の帝王」となり
裏の世界を一手に仕切り、日本陸軍の深い闇
を肚に納めたまま、終戦と共に命を絶つ。


凍りつくような視線で恐れられた反面、
近しく交わる人達からはとても慕われ、
絶大な信頼を寄せられた、、謎の人物。





この本は元々、甘粕正彦を書こうとしたもの
だけに、大杉事件も詳細にレポートするが
「甘粕は真犯人ではない!」というのは
当時から公然の秘密だったという。


問題の一つは、大杉夫妻と一緒に殺害された
6才の子供が、実はアメリカでレストランを
営む、「大杉の妹夫妻」の子供だったこと。
自然とアメリカ大使館が介入してきた。


この時アメリカは、反日感情高まる中でも
17年前のサンフランシスコ大地震支援の
返礼として、日本へ救援物流を送る途中。。
アメリカ国籍の幼子が、日本天皇の命令下
軍隊に殺された・・のでは、誠にマズいのだ。


大正15年、出所後の記者会見。






甘粕が憲兵になるのは、陸士卒業後
陸軍戸山学校時代に落馬で膝がダメになり
師の東條英機に転身を薦められたから。


二人の師弟関係は生涯続き、満州時代からは
資金面、謀略面で甘粕が東條を支えた。
東條も甘粕だけは絶対信頼した、という。

東條英機





甘粕が満州に来たのは、河本大作の失敗
(張作霖爆殺の関東軍謀略がバレて、日本は
窮地に立たされた・・)  を取り戻せるよう
石原と板垣を助けてやれ。との密命。


以後、満州事変からの全土征服~建国へ
危険、かつヤバい仕事に暗躍する。
支那人に札束を握らせ、騒ぎを起こさせ、
鎮圧する名目で関東軍が出動、侵略。


溥儀を変装させ、行李に潜ませ紫禁城脱出、
満州まで直接警護、同伴したのも甘粕だ。


ハルピン攻略も、露払いは甘粕の謀略機関で
「満州の甘粕」の名は地下に知れ渡った。
懐には常にピストル、曲り角では立ち止まり
裏切り者は即座に始末。が、甘粕の流儀。

満州時代の甘粕





昭和11年、「満州国産業開発五か年計画」
始動のエース官僚として岸信介が渡満する。
岸は東條英機の頭脳、懐刀となり、
甘粕とは、生涯の刎頸の友となった。


「昼間の満州は関東軍が支配し、夜は甘粕が
支配する」・・・と言われたけれど、実は
陰の支配者は「官僚」で、イコール岸信介。
関東軍の操縦など、お手の物だった。

満州での岸信介(のぶすけ)
現在の安部総理の祖父。佐藤栄作は実弟。





頭の回転の早さと、歯に衣着せぬ言葉で
付け入る隙を与えない。
「ガタガタ言うとぶった斬ってやる!」が口癖の、暴れん坊・辻政信も眼中に無し!
「連中は単細胞だからおだててやればいい」
と楽しんで、あしらっちゃう。


「関東軍に正面切ってモノを言えるのは
満州広しといえど岸信介だけ」    しゅごい。


岸は「アユを釣りに行って鯨がかかった」って
日産の鮎川義介・満州移転を実現し、
甘粕も、李香蘭を擁する国策映画会社
満映の理事となり、表裏両輪で活躍する。

満州映画協会






だがしかし!!!

それもこれも、てか建国も産業も繁栄も、、
全てはアヘン売買の金だったなんて・・OMG!!

アヘンなしに、満州は何一つ存在しない。
これこそが「甘粕機関」のお仕事。。


A.熱河省の栽培農家から満州国政府専売で
精製・販売。  危険を侵した「熱河作戦」の
目的は「見渡す限りの芥子畑」なんだ。


調達運輸は  “総合商社” 満鉄 のお仕事なので
三井物産社員は 「熱河の阿片は甘粕がヒモ
だから、手を出したら命はない」と囁く。


満州国は禁煙総局で表向きアヘンを禁止する
ので、価格はつり上がり、禁止と販売の
同時進行という、見事な二重構造に。。(*_*)

ネット画像、満州の芥子畑。
中国の芥子の花はまっ白なんだって。





もちろん、岸もどっぷり関わっている。

が、阿片に関しては東京裁判でも不問で
岸信介は不起訴処分になった。
大陸でのアヘン問題を取り上げると、
中国を喰いものにしてきたイギリスの汚点が
明るみに出るからね。。

B.上海ルート、香港ルートは英国軍艦で
臨検なしの陸揚げだと。なんてことだ。




甘粕は満州で自決、
東郷は東京裁判で死刑。
岸は満州での壮大な実験を基に
戦後日本の驚異的復興を成し遂げる。


「満州でのことは墓場まで持っていく」
これも実現したようだ。

現在の満映。
終戦時、関東軍は真っ先に逃げ出したが
甘粕は従業員に金を分けて逃がし、
青酸カリを仰ぐ。





私の心は千々に乱れております。
歴史なんて、薄っぺらな本何冊読もうと
全く分からないんじゃないだろか。