●並河靖之七宝 @東京都庭園美術館 | ★50歳からの勉強道~読書録★

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本は友達。一冊一冊を大切に記憶に留めておきたい。

明治期の「幻の七宝家」、並河靖之は
古代エジプト期から存在する七宝を
独自の研究で極めた、最高峰といわれる。



その超絶技巧は一代限りで受け継がれず、
現代の技術では到底、再現不能なのだ。



ほとんどの作品は輸出用に作られ、
ヨーロッパで大変な人気だった。
それを最近になって買い戻し、
日本で身近に見られるようになるのは、
ほんの十数年前のこと。







思ったより作品は皆小さく、ほとんどの
花瓶や壺は手の平サイズなので、単眼鏡が
貸し出され、みなみな腰を屈め、
まじまじまじまじ、四方八方から眺める。


とにかく緻密で繊細!美しい事この上なし。   しかもデザイン、カッコ良すぎ!



実物はもっともっと小っちゃいんだ!





あんまり混んでなくて、ゆっくり見られた
けど(6日木曜)、作品数が意外に多く、
目を見開き続けて、疲れちゃったよ(◎-◎;)







京都の武士の子に生まれた並河が、
七宝を始めたのは、なんと28才。遅い~


10才で青連院門に仕え、審美眼は磨かれた
のだろう。。23才で維新を迎え、
外貨獲得のため新政府が奨励する
工芸品の世界に飛び込んだ。


そこから、既存の技術や釉薬にあきたらず
開発した技術の数々は、全てオリジナル!






もともと室内装飾に使われていた七宝は、
幕末に有線七宝の技術が確立し、
工芸品が作られるようになる。

少数精鋭の並河工房。弟子を見守る。





並河は釉薬の仕切りである金線、銀線も
叩いて伸ばし、厚みを変えて、デザインの
一部とする。元々の厚さ1ミリの金線に
こんな気の遠くなるような細工を施すのは
並河だけなのだ。






一枚の葉っぱにも、奥行きや表情をつけるため、微妙に違う釉薬をのせる。
植物ごとに違う緑を作り出し、桐の葉だけで
15種類もの「葉色ぼかし」があった。



暇があれば庭の木々を眺めていた、というのは、鶏を眺める若冲と同じだねえ。。






並河にはライバルがいる。
「無線七宝」を編み出した東京の濤川惣助。


なぜか同じ、「なみかわ」で、共に現在の
人間国宝たる「帝室技芸員」に選ばれた。


西の並河、東の濤川。評判を二分した。





無線七宝は、釉薬を乗せた後、銀線を外す
ことで、ぼかしが入り絵画のようになる。






この柔らかさで焼き物の模様。不思議だ。






このライバルに対抗するべく、並河が繰り
出した必殺技。それが「黒色透明釉」ダー!

海外で「ナミカワの黒」と絶賛される、
光輝く透明で、吸い込まれるような深み。
ほんとにコレ、宇宙の色・・・だと思うよ。


これは展示が無くて残念だった・・・・
皇室の名宝、「四季花鳥図花瓶」  
テレビ見た特集番組より。






しかも機械で分析すると、藤の花瓶の黒は
他と違って青みが入っている。
柄によって釉薬の配合を変えることで
単なる背景でない効果を生んでいるんだ。


このイカシたデザインを見よ!







東京都庭園美術館は目黒にある。
桜の名所、目黒川も大賑わいだったけど・・



本日の桜は、並河靖之の圧勝!




蝶々だって、飛んでるよー