●渋江抽斎 @森鷗外 | ★50歳からの勉強道~読書録★

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本は友達。一冊一冊を大切に記憶に留めておきたい。

エレカシ30周年記念!というわけでは
ないけれど、ようやく読んだ
「渋江抽斎」   by   森・鷗・外!


宮本さん渾身の名曲「歴史」

♪『歴史・・・名作山椒太夫。
   そして渋江抽斎に至って輝きは極限。
   そう、極限に達した。
   凄みのある口語文は最高さ』


という歌詞を見て、読んでみるものの、
難しくて挫折した・・というファンあるあるの
課題図書。わたくしに至っては
これ「人名」か!と、最近気づいた次第。テヘ






渋江抽斎さんは幕末の人で、
江戸詰めの津軽藩士。漢方医として
将軍の奥医師を務め、古書を研究して、
正しい意味を探る「考証学」の学者でもある。


でも、全然有名じゃない人。なのに
鷗外がなぜ史伝を書いたか?というと、
「自分に似てる!」と思ったかららしい。







森鷗外は相当マニアックな人らしく、
江戸時代の「武鑑」を集めていて、
→(武士の名簿や知行、石高、位官のデータ
一覧表or図鑑みたいなもの)


その過程でたびたび目にする「渋江蔵書」と
いう印が気になる・・・
しかも自分と同じ医者で、官吏らしい。

各藩の武鑑が、たーくさんある。





「耳をすませば」で、雫が「天沢蔵書」の印に
惹かれたのとちょっと似てるかなぁ。。
そんな尊敬と、恋心が混じったような、
運命的な出会いの力に引き寄せられ、、


森鷗外は「渋江さん探し」に没頭する。
しかも、渋江抽斎の存在を調べる過程から
事細かに説明し始める、という、これまた
マニアック、及び型破りな構成で。。


裏表紙の解説




しかも三分の一くらいは、渋江抽斎の家族や
友人の、出自等の説明に終始する。
抽斎が影響を受けた名もない趣味人の
先祖、妻、妻の親、その弟、弟のエピソード
・・・と話題が拡散してゆくので、
なんじゃこれ?まるで宮本さんの
バラエティーでのトークではないか?。。と。


皆さんが、「わからなくて挫折した」というのは、意味がわからないんじゃなくて、
なんのこっちゃ?という意味不明につき、
読む忍耐が続かなかった・・という事らしい






さらに斬新なことに、抽斎の伝記でありながら、本の半分で抽斎は死に、
後は明治〇年・抽斎の死後〇年目・・と、
家族と友人の様子を淡々とレポートし続け
これが死後50年以上続いちゃう。



で、面白くないかと言えば、これが結構
面白かった!   最初は忍耐&
あ~無理っぼい・・・という挫折感しかなかったが、幕末の動きが出てからは、
知ってる偉人も出てきて楽しくなった!


でも、明治の文豪に傾倒する宮本さん
みたいな感動には、当然至らず。。。
こういう文章に親しむので、初期エレカシ
の歌詞は、ちょいちょい文語調なのよ。
ロックなのに。。たまらぬ魅力。(^^)v






この時代の人々の寿命の短さには驚かされる。
妻や妹、弟が2、30代でどんどん死んでゆくし、産まれた子供も次々夭折してしまう。
離婚も多いよ。キッパリしてるー


そして、知人、親類筋の結び付きが濃い!
家には常に「食客」として、学を志す知人の
息子やら、親類筋のそのまた知人やら、、
面倒みてあげる他人が同居していて、


習い事の為、知人に弟子入りするとか、
就職、家探し、縁談の口利き、喧嘩の仲裁
・・・人間関係、超濃密だわー。。。



鷗外はいちいち、〇年〇月〇日、
この時抽斎〇才、妻〇才、子供〇才、〇才、
〇〇から〇年後の出来事で、〇と〇は〇才の
年の差がある。。と、めちゃめちゃ数字を
挙げて解説するんだけど、きっとご本人も、
抽斎に成り変わって茶の間に座り、
時々の情況をシミュレーションする為、
必要な作業だったのかも。







表紙の絵は、妻の五百(いお)さん。
抽斎4番目の妻となった賢夫人で、抽斎より
この人の方がオモシロイ。


ここ、抽斎が金目当ての狼藉者に襲われる
のを救った、坂本龍馬のおりょうさん以上の
武勇伝で、唯一声出して笑えた場面(^^)






渋江抽斎を敬愛した、森鷗外。
その森鷗外を敬愛する、エレカシ宮本。
皆、似た感じの個性を持っているようだ。