相応和尚
比叡山の千日回峰行は、「此の峰を巡礼し山王の諸祠に詣じて毎日遊行せよ」と、根本中堂の薬師如来の夢告を受けて相応和尚によって始められました。
なぜ歩くか。
行を始めて最初の700日は、自分のために祈って歩きます。何を祈るか。他人のために祈れる資格を自分が得られるようにと祈るのです。
700日目と701日目の間に、千日回峰行中最大の難行「堂入り」があります。自利行(自分のために祈る)から他利行(人のために祈る)に移る節目の行です。9日間、断食、断水、不眠、不臥といい、つまり一切食べ物も水も摂らず、眠らず、体を横にすることもできない行です。
その行を終えて、701日目からは、ようやく人のために祈ることが許されるのです。今度は、ただひたすら人の幸せを祈って、歩き続けるのです。
叡南俊照大阿闍梨 昭和五十四年満行