慢性的な肩関節の痛みを訴える患者さん | Aussie Physio (オーストラリアの理学療法)

Aussie Physio (オーストラリアの理学療法)

日本で理学療法士として働いた後

オーストラリアでPhysiotherapist (理学療法士)になるために渡豪

そんな日々の中での気づき

今日は久しぶりにケーススタディのお話を。

20代後半の女性

Subjective
左肩の痛みにて来院。2013年に肩の急性な痛みと何かが切れる感覚ををネットボール(オーストラリアで盛んなバスケットボールに少し似たスポーツです)をプレイしている際に感じ、フィジオセラピー受診、保存療法(ステロイド注射と理学療法)を8ヶ月行うも症状の改善みられなく、スペシャリスト(整形外科医)受診、ローテータカフ(棘上筋)の手術とその後のリハにて再度ネットボールができるまで回復。

2015年1月(5~6ヶ月前)にネットボールをプレイしている際に、再度似たような痛みを左肩に感じその後徐々に痛みが悪化。特に激しい外傷ではなかったが痛みが引かず、一週間前に一般開業医(GP)受診、MRIにて再断裂はなしとのこと。Mild Bursitis (subacromial + subdeltoid滑液包炎) があるものの特にローテータカフに異常はなし。理学療法受診を勧められ本日来院。

職業:ショップ店員(服を畳むなどの反復的な動きが多く、1日の終わりには痛みが悪化)

疼痛
安静時:肩関節全体に重いジンジンするような痛み(6/10)
動作時:肩関節全ての運動方向にて鋭利な痛み(8-9/10)
しびれ:Ulnar nerve (尺骨神経)領域に継続的なしびれあり(5~6ヶ月前から)

関節可動域
AROM 肩関節 
屈曲 左 95° P1 R1 (PROM 120° P1 R1) 右 175° R1
外転 左 100° P1R1 (PROM 120° P1 R1) 右 175° R1
外旋 左 60° P1R1 (PROM 60° P1 R1) 右 80° R1

頸部 ー 頸部周囲筋群に硬さはあるも肩の痛みは再現されず

触診 : 若干の熱感が肩関節外側部にあり
筋硬結:棘下筋、小円筋、僧帽筋上部、菱形筋、肩甲挙筋にあり

その他の整形外科テストは irritability(どれだけ症状が悪化しやすいか)が高かったため行わず。

評価の判断

ここまでの評価では基本的に主観的評価、客観的評価について述べていますが、痛みの性質からするとIrritability が高いため多くの評価は行えず、慢性的なことを考えるとメカニカルだけの要因ではないのかなと感じました。

また、本人も動かしている際に ”痛くなりそう” というようなことを言っており、かなりの防御性の収縮が入っていました。痛みの治療に関して、本人の過去の痛みなどの経験からくる運動パターンの変化については近年の文献などでも注目されていますが、多くの患者さんは脊柱に関連する場合が多く、今回の患者さんのように四肢の痛みでもそういったCentral sensitisation やPeripherap sensitisation、また運動パターンの変化というのも起こりうると感じた今日でした。

ただ、これが果たして本当にそうなのか、これから介入を行って変化を見ていかないとわかりませんが、今日僕ができる範囲で行ったことは、まず病態の説明(なぜBursitis があったとしても、それだけがかならずしも痛みの原因とは言い切れないということ ー ちなみにこの患者さんも反対側の肩にBursitisがあるのに痛みがないと自分で訴えていました)、肩関節の機能解剖の簡単な説明、そして、動かしていくことの大切さなどを説明しました。

また、自動介助運動による肩関節の運動もプーリーにて行ってもらい、深呼吸と合わせながら行うことによって自分で120°まで屈曲することができることを確認してもらいました。これから徐々に痛みを確認しながら動きを増やしていってもらおうと思っているところです。なんせ Irritability が高いため多くのことができず、シンプルだけど目に見えて動かしていくことが実は危険なことじゃなく、正常な肩の生理機能を保つ上で重要だということを理解してもらうように努めました。

これからどうなるかわかりませんが、また報告させてもらえたらと思います。もし、こういった治療もいいんじゃないか等のご意見ありましたらよろしくお願いします!

それでは今日も読んでいただきありがとうございました。