その日は、役所に行く日だった。
アイデンティティカードを電子化するために
約束の時間に間に合うように
家を出る。
役所か…
どうも気が重い。
イタリア名物「たらい回しの刑」には
あいたくないものだ。
私が予約した場所は、
家から歩いて15分くらいのところにあった。
リベルタ広場の先にある大きな所の方が
良かったのかもしれないが、
そこまで辿り着くのに
何とも不便な地の利にある。
だから、出張所みたいな感じの
近場にある方を予約したのだ。
携帯のナビを片手に、
トボトボと辿り着くと、
予約時間より10分ほど早い時間だった。
予約した時には
その時間しか空きがなかった割に
誰も居ない。
用もないのに、予約する輩が居るのだろうか。
イタリアという国は、
時々、理解しかねる。
受付のおばちゃんの手が空いたので
聞いてみよう。
「あの…予約した者ですが…」
つづく。