映画『異人たちとの夏』(1988年) | Y's Diary

監督:大林宣彦 原作:山田太一(小説 1987年)

 

舞台は浅草。

 

英雄(風間杜夫)は40歳のシナリオ・ライター。

妻子と別れて一人暮らし。ある夏の日の夕暮れ、英雄は幼い頃に住んでいた浅草で既にこの世にはいないはずの父と母(片岡鶴太郎・秋吉久美子)に出会う。ふたりは英雄が12歳の時に交通事故で亡くなったが、なぜかその時の年齢のまま、浅草に住んでいた。その日以来、英雄は浅草の両親の家へたびたび通うようになる。一方で、英雄は同じマンションに住む桂(名取裕子)と、愛し合うようになっていた。桂は英雄にもう両親と会うなという。異人(幽霊)に近づくと体は衰弱し、死に近づくのだ。

英雄は苦渋の決断をし、両親に事情を話す。そして、最後に浅草にある今半へ行き、両親にすき焼きを振る舞う。英雄は両親に感謝の気持ちを伝え、両親は最後まで英雄に心をのこしてその場から消えて行った。しかし、英雄の衰弱は止まらない。桂も異人だったのだ。桂にあちらの世界へ引き込まれそうになった英雄を友人・間宮(長島敏行)が助ける。その後、体調の回復した英雄と間宮は両親が住んでいた浅草へ行くが、その古いアパートは夏が来る前に取り壊されていた。草の生い茂った跡地に線香を焚き、手をあわせ、短い夏の間の不思議な体験を思い起こすのだった。

 

父母の住むアパートは昭和の時代を思い出させ、とても懐かしい感じがする。

手作りのアイスクリーム、すいか、花札、線香花火。

 

最後に、すき焼きを食べるシーン。親がいなくても立派に育ったと英雄を褒める両親に「お父さんたちの方がずっと立派」「父さんたちがずっと生きていたら大事にできたかどうかわからない」

だんだんと姿が薄くなっていく父と母に、「ありがとう、どうもありがとう」と泣きながら言葉をかける英雄。

 

父さんたちがずっと生きていたら果たしてこんなに大事に出来ただろうか、との英雄の言葉。

親が元気な時には、心から愛おしく思い大切にすることを怠りがち。

「そうなんだよなあ」と胸が痛い。過去に戻れたら絶対に!と思うのだ。

 

この映画がロンドンを舞台にリメイクされた。

人物や状況が変更されているが、小説“異人たちとの夏”のオリジナルをもとにつくられている。

 

“異人たち” (英題:All of Us Strangers 2024年4月19日公開)

 

夜になると人の気配が遠のく、ロンドンのタワーマンションに一人暮らす脚本家アダムは、偶然同じ

マンションの謎めいた住人、ハリーの訪問で、ありふれた日常に変化が訪れる。ハリーとの関係が深まるにつれて、アダムは遠い子供の頃の世界に引き戻され、30年前に死別した両親が、そのままの姿で

目の前に現れる。想像もしなかった再会に固く閉ざしていた心が解きほぐされていくのを感じるのだったが、その先には思いもしない世界が広がっていた…

 

公式サイトより