5月8日9日
いよいよロデヴの町のパン屋さんへ
ロデヴはモンペリエから40kmほどにある、エローHeraut県(ラングドック地方)の山間の小さな町です。
ローマ時代の道が通るこの町はサン・ジャック・ド・コンポステーラに向かう巡礼の通過地点でもあるのです。
町の中心を走る道Grand rueの石畳には、巡礼者の印、帆立貝のモチーフが!
帆立の飾りのついた杖でも持ちたいような気分です。
町一番の老舗「サンショーSancho」へ
パン・ド・ロデヴは、パン・パイヤスとして知られます。
サンショーさん。1903年創業、祖父母の代からパン屋さん。
陽気で話し好きな、気のいいムッシュです。
先月に店を別の人に売り渡し、今は引き継ぎのためにお店に来ているそう。間に合ってよかったです。
「マドモワゼル、いくつなの?」
「18歳」
「・・・(そんなはずないだろ!)」
「じゃあ22歳」
「・・・」
本当の年を言っても
「ガハハ!」
日本人の年齢というのはフランス人にはつかみにくいよう。
パンの話を聞きにきたのですから、こんな話はどうでもよいのです。
「お菓子を作るのは君か? シュクレ生地の作り方を言ってみなさい」とか「サヴァランのシロップの比率は」とか。関係ないってば。そんなことより、パン屋さんの歴史の話を聞きに来たのです。
サンショーさんのスペシャリテ、くるみのタルトtarte aux noix
シュクレ生地にカラメルがけした胡桃を流し、上はメレンゲで覆い、オーヴンで乾かしてあります。
とても素朴ですが、胡桃がおいしく、なごめる味でした。日本へのお土産にいくつか買いました。
(ロデヴを離れた後、近くの道の駅のような「地方物産館」にもサンショーさんのタルトは売られていたので、やっぱり名産品のようです)
サン・フラクラン教会 Eglise de St Flucranにはちょっとおどろおどろしい話が残っています。
フランクラン聖人はロデヴの町の守り神で、教会には聖遺物がおさめられています。
亡くなって100年もたってから遺体がそのままの形で残っていたことが発見された後、町の人々のなお一層の尊敬を集めますが、プロテスタントの侵攻でその体が切り刻まれてしまいます。
この体を切り刻んだ肉屋はときを経た今はパン屋に(さっきのサンショーさんの支店)!
(詳しくは、パンニュース社「B&C」に掲載させていただく予定です)
マリア像のある高台から、ロデヴの町を望む。
かつてドンク仁瓶さんのパン・ド・ロデヴを初めて口にしたとき、まさかここまで来られるとは思ってもみなかった、素敵な未来がやってきました。たくさんの方に感謝の気持ちでいっぱいになります。
そんなことを思いながら、ふと振り返ると鮮烈な紫色の花が咲いています。
「あれ、この葉っぱ、セイジなのでは?」
葉をちぎってみると、間違いなくセイジの香りです。野生のセイジ! しかもロデヴ産。
わあー!と一気にテンションがあがります。
すぐ後ろで、同行した方の声が聞こえました。
「あっちは、タイム!」
きゃーきゃー騒いでしまいました。大事に摘んで帰って、パリのホテルで乾かし、日本に持って帰る予定です。もちろん料理に使います。
私にとっての「ロデヴへの道」をたどりながら、お別れです。また来ることができますように!