芦屋「ベッカライ・ビオブロート」へ取材に | 塚本有紀のおいしいもの大好き!

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フランス料理とお菓子の教室を開いています。おいしいものにまつわる話し、教室での出来事など、たくさんお届けします。
 

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芦屋「ベッカライ・ビオブロート」に取材に寄せていただきました。
芦屋市宮塚町14-14-101

この前に続き、B&C2012年3-4月号の巻頭特集「接客を考える」のためです。

ドイツでマイスターの資格を取得された松崎さんと奥様のたきさんが取材対象です。
松崎さんは、「もともと昔からあるもの」に憧れがあり、過去にもあって今も、未来もある仕事としてパン職人を選ばれたのだそうです(鍼灸師になるかパン職人になるか、の選択だったのだとか!)
オーガニックの小麦を店の厨房で石臼挽きして全粒粉のパンを焼いておいでです。店の中で白いパンは食パンだけ。酸っぱくないドイツパンばかりです。
2005年のオープンからすぐに話題となり、ずっと人気のままです。

そういえばずっと前の真夏のある日、お店に向かった私は「夏休み1ヶ月」の張り紙に愕然としました。
奥様の出産のためです。
えええぇぇ、ここまで来たのに・・。ちいぃぃ、と思いつつも、反面で私はこういうあっぱれなお店には俄然興味を惹かれます。オーガニックのパン屋さんということ(オーガニックであることもそうですが、困難に思われる道を一途に貫かれる姿勢にこそより興味を惹かれます)だけでも私には興味深いのです。
いつかご店主にお話が聞けたらなあ。そう思ってから、5年ちょっと、ようやくの機会が巡ってきました。


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全粒粉のクロワッサン
割ってびっくりしました。全粒粉のパン屋さんであると頭では分かってはいたものの、中が白くないクロワッサンにはやっぱり驚いてしまいます。全粒粉の粒粒がいっぱい見えて、噛むと甘みがあります。バターの香りもほどよく、なんとも通常のものとは違うおいしさがあります。
ドイツにもクロワッサンもバゲットもあるのだそうです。
「日本でも、クロワッサンもバゲットもあるでしょう?」
たしかに。


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ヌスシュネッケンは胡桃が巻き込まれたパン。当然生地は全粒粉によるものです。
「何これ、何これ」と言いながら、クロワッサンに続いて1個食べてしまいました。シナモンロールもオーガニックのシナモンが上品に香り、穏やかなやさしい味わいにやはりこちらも一気に食べてしまうことに。




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奥様の多貴さんが松崎さんと知り合われたのは、ドイツのお花屋さんで修業をしていたときのこと。師を追ってドイツまで行ったのに、今はもうお花の仕事をしなくてもよいのでしょうか?(もし自分に置き換えて考えるなら、「フランスまで料理やお菓子のために行ったのに、仕事を変えられるのか?」ということです。おまけに食の仕事をしていなければ、たぶんお花の仕事を選んでいただろうと思う私にはよりいっそう聞いてみたい質問) 
「彼の作ったパンを売れる、ということが私はうれしいのです」
まああ! これだけで一本記事が書けるくらいです。
「それで楽しくいられてお金がいただけるのですから、そんなありがたいことはないのです」

接客はすべて奥様にまかせておられ、シェフは
「マニュアルはないし、自分の言葉でしゃべってくれればそれでいいと思っています」
とのこと。

そんなお店の接客がよくないはずはないのです。
涙ぐましい努力をしているたくさんのお店があるはずです。もちろん必要なことです。
でも接客は技術ではないのだ、と今回の2軒の取材で、あらためて思いいたりました。