ガレット・デ・ロワを作りました(製菓基礎講座1月) | 塚本有紀のおいしいもの大好き!

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フランス料理とお菓子の教室を開いています。おいしいものにまつわる話し、教室での出来事など、たくさんお届けします。
 

1月22日(土曜)、24日(月)
製菓基礎講座1月は毎年ガレット・デ・ロワgalette des roisを作ります。
ガレット・デ・ロワは1月6日のご公現épiphanieの祝日のための、フランスの行事菓子です(詳しくはコラムにて)。

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教室ではフィユタージュfeuilletage(折り込みパイ生地)を折るところからスタートするので、ちょっと大変です。
通常は前日に3つ折りを4回、当日2回折ってから焼くのが理想とされますが、教室ですからそんなわけにも行きません。そして何より食べたいときに、食べたい! のです。というわけで当日中に5回折って焼いてしまいます。

まだまだコシがある段階で焼くためにどうしてもばんばんと膨らんでしまいます。パリで売られているガレット・デ・ロワも大らかにぼんぼん上がっていたので、私は「ガレット・デ・ロワとはそういうもの」と思っていましたが、じつは薄くないといけないのだそう。これは、だれもが平等に中のアーモンドクリームを食べるためなのだとか。

さて今年は寒いとはいえ、極寒ではなかったので、暖房なしでスタートしました。もちろんみなさんには充分な厚着をお願いしています。
バターは可塑性(指でひねって形が取れる性質)を示すのが、13-18℃。
バターがこの温度帯にあるうちに折ってしまわねばなりません。ちなみにバターケーキを作るためのクリーミング性を示すのは20-24℃、溶けるのは31℃超。バターが溶けてしまうと層状に焼き上がらないので30℃超えになるのは問題外としても、20℃を超えて柔らかくなると生地と同化しやすくなるので、あまりよろしくありません。
というわけでなるべく温度が低い部屋である必要があるのです。当然のことながら、むやみやたらに手でぺたぺた触るのもよくはありません(気持ちは分かりますが、よい結果を招きません)。

デトランプdétrempeにバターを包み、3つ折りを5回行います。
丸くくりぬいて、2枚のフイユタージュの間にクレーム・ダマンドcreme d'amandeをはさみ、フェーヴfeveを入れます。
表面に溶き卵を塗り、ナイフで模様をつけてオーヴンへ。

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(パリで9.2~9.5ユーロ/10個)
ところで教室が始まる前に、ちょっとした比較検討のためにもう1台のガレットを焼いておきました。味見をしたら、残りは知人に持っていくつもりです。もちろんフェーヴもちゃんとしのばせてあります。

そして自分の味見のために、ほんの1/10ほどを切り分けたら・・・、クレームの中からフェーヴが!
やったぁ!!
と思ったのもつかの間。自分で入れたフェーヴに当たってしまうなんて。私は思いっきり運がよいのか悪いのか?? 
致し方ないので、フェーヴはクレーム・ダマンドの中にそっと埋め戻しておきました。

さてフィユタージュの残り生地から、ポンヌフPont-neufを作りました。
ポンは橋、ヌフは新しいという意味です。つまり「新橋」。パリのセーヌ河には、今ではもっとも古い橋となってしまったポン・ヌフがかかっています。とても美しい橋です。


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河の方へぽこっと張り出したところは石のベンチになっていて、一休みすることも可。座ってぼんやりセーヌを眺めるのもよいものです。

さてお菓子のポン・ヌフはフィユタージュのタルトレットで、シュー生地とカスタードクリームを同量で合わせて絞りだして、十文字のひもをかけて焼いたもの。
「シュー生地とカスタードを混ぜた生地って?」
の質問がよくでます。ピンと来にくい、その気持ち、よく分かります。
答えは「シュークリームを噛んで噛んで、最後のほうの味」。
毎回「変なお菓子だなあ」と思いながらも、なぜか妙においしく、愛さずにいられない存在です。
シュー生地はたいしたもので、同じだけのカスタードが混ざっているというのに、オーヴンの中で律儀にぷっくり膨らみます。(ときどき膨らみすぎて、割れることも。シューと同じで、「絞りが命!」です)

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焼き上がったら、粉砂糖とグロゼイユのジャムを交互にのせます。

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この格子模様が橋を想起させるからこんな名前があるようなのですが、橋って言われても・・・?
ポン・ヌフはその名前からも分かるように、パリの地方菓子に分類されます。でもパリでよりも、日本のフランス菓子屋さんか本の中で見かける方が多いような気がします。