今月の料理講座では、
「les carnets de cuisine de Monetモネの料理帖」から、モネの食卓を再現してみました。モネの絵もからめて、背景も読み解きながら。
モネのジヴェルニーの家の台所を訪れたとき、美しく整っていて、銅鍋がずらりと並んでいました。普通の家庭にはおそらくないであろう大きな魚用のチュルボティエールやポワソニエールまであるのを見て、
モネはきっと食べることが大好きだったに違いない!
と思ったことがスタートです。
レシピにあるのは、キュイジーヌ・ブルジョワーズと呼ばれる、裕福な市民層の家庭で出されてきた、家庭料理でありながら、きちんと格式のあるお料理の数々。
本にあるレシピはなかなかにアバウトだったり、単位が古くて知らないものだったり、オーヴンの温度が「熱い」だけだったり。でも、まさかモネも死後に自分のレシピが出版されるとは思っていなかったでしょうし、今の時代のようにサーモがあるわけでなし、当然といえば、当然。
そんなことに思いを巡らせるのも楽しい時間でした。
主菜は、「エトルタの断崖」を思い起こさせる舌平目のノルマンディ風。
舌平目はブレゼにして、ほかにいろいろ魚介類はクールブイヨンで煮て、
白いソースで仕上げます。
たくさんの魚介の旨味が凝縮して、とてもおいしいソースです。
そして仕上げには「マデーラで煮たトリュフ」を添えるとあったので、
やってみました。
悪くないですが、甘味と酸が入り、個人的には「トリュフのままでいいのに〜」と思いつつ、でも「モネが言ってるから」と、そのままを。
マデーラで煮たトリュフの味を知るのも勉強ですね。
アミューズはレシピの中にはなかったのですが、睡蓮を模したラディシュのバター添えを作ろうと計画。
池(ヨーグルトの乳清)と睡蓮の葉(ナスタチウム)まで準備したのに、
なぜかどうしてもラディッシュが見つからない!!
ラディッシュに切れ込みを入れて、花のように咲かせて、睡蓮の花にしようと思ったのに!
今までで一番ラディッシュが欲しかったのに〜。
ないのです。
致し方なくて、大根をくり抜き、赤玉ねぎで染めてみましたが、染まらず・・。
まあ、人生とはそんなものですね。
きっと明日はスーパーに並ぶでしょう。
前菜には、鴨のパテPâté de canardを作りました。
ファルスや具を積み上げるのはいつも楽しい作業です。
積み上げた、そして豊穣なイメージの
連作「積みわら」
を思い浮かべながら。
モネの庭の菜園や果樹園には、レタス、ホウレンソウ、ラディッシュ、キャベツ、モモ、ナシ、プラム、サクランボ が育てられ、鴨や鶏も飼われていたそう。モネは鴨の品種にもこだわっていたそう!
豊かな菜園からの産物で、
「ナスとトマトの重ね煮aubergines aux tomates」
デザートは「ルーアン大聖堂」の夕暮れ色の
「桃のクルートCroûtes aux pêches」
時期的にネクタリンにしました。酸がきゅっと入って、おいしかったです。
氷を使う、手動のアイスクリームマシーンが本に載せられていて、バナナアイスを作って振る舞ったことが書かれていたので、
バニラアイスも添えてみました。
ちなみにモネは晩年白内障で目が悪く、だからこそ、連作では、光の変容を追い求めていたのだそうです。
ワインはメインにあわせてシャブリ、チーズはブリー。もちろんともに当時からあるはず。
モネの時代の後半、バゲットはもうパリには登場している頃ですが、それはあくまで都会のパンなので、丸いパンのはず。
補いながら、考えながら、モネの料理を再現してみました!
彼の人生をたどりながら味わう時間は、本当に贅沢なひととき。
そしてブルジョワ料理について深く考える機会になったことも、大きな学びでした✨
生徒さんも、「とっても面白かった。ぜひまたこのシリーズ、やってください!」と言ってくださり、次は誰にしようかと早くも思いを巡らせています。
一緒に楽しんでくださったみなさま方、どうもありがとうございました!