商(あき)じこり | 雪太郎の「万葉集」

雪太郎の「万葉集」

私なりの「万葉集」解釈
カレンダー写真は「鴻上 修」氏撮影

 西の市にただひとり出でて目並べず買ひてし絹の商(あき)じこりかも

  巻7 1264 作者不詳

 西の市にたった一人で出かけて、見比べもせずに買ってしまった絹、その絹はたいへんな買い損ないであった。「目並べず」は(見比べもせずに)の意味。「商じこり」は買い損ない。

 平城京の中心を貫いていた「朱雀大路」を挟んで東と西に市場が設けられていました「東の市」が1日から15日までで51品目、「西の市」は16日以降で33品目取り扱いました。「西の市」の場所は、平城京では右京区「八条二坊」で現在の下京区「御前通」のあたりだそうです。(「東の市」は左京区「八条三防」で現在の「東九条」あたり)

 「西の市」だけで取り扱っていた「独占品」には「絹、麻、綿、紗、調布、糖、未醤(みそ)、土器、牛」など16品目ありました。

 この歌の真意は、歌垣(男女の出会いの場でもあった)で自分が選んだ相手が見掛け倒しであったことを言っているという説と身分の高い家の女性を妻にした男が気苦労の多さをぼやいたもので「仲人口にだまされて見掛け倒しの配偶者を得たことを悔いる気持ちの比喩歌である」という説があります。