「ゆり」は「いな」 | 雪太郎の「万葉集」

雪太郎の「万葉集」

私なりの「万葉集」解釈
カレンダー写真は「鴻上 修」氏撮影

 我妹子(わぎもこ)が家の垣内(かきつ)のさ百合花 ゆりと言へるはいなと言ふに似る

  巻8 1503 紀朝臣豊河(きのあそみとよかわ)

 あの子の家の垣根の内に咲いているさ百合花、その名のように「ゆり」(あと)でと言っているのは「いやだ」ということと同じです

 紀朝臣豊河は従五位下。「垣内(かきつ)」は「カキト」の転で「つ」は(所)の意味だという注釈がついております。「我妹子が・・・さ百合花」までは(後で)を意味する「ゆり」の序詞。「さ百合の花」に美女への憧れを込めているようだとも説明されています。「さ」は接頭語です。「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」という感覚が万葉の頃にもあったのでしょうか。それとも、この歌のように「ゆりあとで」の意味を持つことから疎まれていたのでしょうか。

 「ゆり」の語源は、大きな花が茎の上部で風に「ゆらぐさま」からと言われています。世界には約130種類あり日本に自生するのは15種類でササユリ・ヤマユリ・オトメユリ・ヒメユリ・カノコユリ・スカシユリ・テッポウユリの7種類が特産です。

 

 福島県の喜多方市熱塩加納町(33万本)と南会津町の「髙清水自然公園」(100万本)「南郷スキー場」には、絶滅危惧種の「ヒメサユリ(オトメユリ)」の群生地があり、見頃を迎えています。