家持と紀女郎の掛け合い | 雪太郎の「万葉集」

雪太郎の「万葉集」

私なりの「万葉集」解釈

 言(こと)出しは誰(た)が言(こと)にあるか小山田の苗代水の中よどにして

  巻4 776 紀女郎(きのいらつめ)

 先に言い寄ったのはどこのどなただったかしら

 山あいの苗代水が淀んでいるように途中で途絶えたりして

 

 大伴家持が贈った「鶉(うずら)鳴く古(ふ)りにし里ゆ思へども 何ぞも妹に逢ふよしもなき(鶉の鳴く古びた里に都があった頃から思い続けてきたのに、どうしてあなたにお逢いするきっかけもないのでしょか)に報(こた)えた歌。「鶉鳴く古りにし里」とは「奈良」のこと。

 「苗代」の水が(湧き水や川の水を引き込んで)温めるために留め置かれて流れが止まることに例えて、ご無沙汰続きであることを皮肉った歌です。このような「言語遊戯的な諧謔的歌」が得意でした。この時、家持は24~25歳で女郎は「春日王」の子「安貴王」の妻で40歳前後でした。美貌と知性を兼ね備えた女性だったと言われております。「小山田」の「小」は接頭語です。万葉集には彼女の歌が12首所収されており、そのうち5首が家持への贈答歌です。

 本題とは直接関係がありませんが、福島県の中央に「猪苗代湖」があります。琵琶湖、霞ヶ浦、サロマ湖についで4番目に広い面積を持ち、農業用水としてだけでなく飲料水や発電にも利用されています。観光資源としても貴重な存在です。近くには標高1,816mの(天に上る梯子の意味を持つ)「磐梯山」が聳えています。また、「猪苗代町」には「野口英世」の生家があります。

「井寺池」は「桧原神社」の西にあり、奈良盆地を一望することができる絶景の地です。西には万葉集で有名な「二上山」「大和三山」が東には「三輪山」が見られます。