私の住む地域では、小学生は登校班で通学することになっている。

 

新一年生が入学する4月は、PTAの親たちが通学路に立ち、それを見守る。

 

 

先日、朝に私が見守り当番をしていたときのことだ。

他の登校班にずいぶん遅れて、のんびりと歩く班がやって来た。このままでは遅刻しそうなくらいに遅い時間だ。

 

 

班長の後ろで、中学年くらいの男子たち3人が、班の列からはみ出すようにして、大層にぎやかに喋りながら歩いていた。

いかにもヤンチャ坊主、って感じの子たちだった。

 

彼らはなんとなく後ろを気にして、ヒソヒソ話をしながら歩いているように見えた。


気になった私もちょっと後ろへ場所移動してみると、道を曲がったカドの、死角になったところに、一人の女子児童が立っていた。

 

彼女は、先に歩いていった男子たちを明らかに気にしていた。

 

チラっと見ては体を隠し、チラっと見ては体を隠し、彼らの視界に自分が入らないよう最新の注意を払っている様子だった。

 

 

なんだか気になって遠くから様子をうかがっていたら、女の子はとうとう、学校とは逆側の住宅街の方へ引き返してしまった。

 

先程のヤンチャ坊主3人組が、登校班を離れてまで、彼女の方へ向かって来たからだ。

 

女の子は、慌てた様子で、塀のかげに身を隠し た。

とてもおとなしそうな子だった。

 

 

それで私はピンと来たのだ。

 

この子、あの3人組にイジめられてるんじゃないか、と。

 

 

 

 

 

 

登校班内でのお友だちトラブルは多い。

同じ班の子になにかとイジられて、学校に行きたくないと訴える子が一定数いる。

 

それで私も、万が一のことを思って、女の子のところへ向かおうとしたのだが…

 

 

その後の展開に拍子抜けした。

 

 

とうとう女の子を見つけた男子たちは、彼女へこう言った。

「おい!早く来ないと学校遅れるぞ!」

 

なに隠れてるんだよ。と彼らが近づくと、女の子は言った。

 

「あ一あ、見つかっちゃった」

 

なんと彼女は、

一人で隠れんぼをしていたのである。

 

 

男子「何してるの?昨日も隠れてたよね」

女子「べつにー」

 

そして何事もなかったかのように、仲良く4人並んでスタスタと、登校班へと戻って行った。 

 

 

私はてっきり、男子3人組がイジメっ子なのだと思っていた。

でも、違った。

どちらかといえば女の子の方が、イタズラっ子だったのだ。

 

それを気の良い男子たちが、わざわざ通学路を引き返し、迎えに来てやったという図式だった。

 

 

 

 

 

一部始終を見ていた私は呆気に取られてしまった。

 

性別と人数のせいだろう。被害者と加害者の関係にちがいないと思い込んでいた。

 

 

私はおそらく周りの大人たちよりも、近所の子どもたちと関わることが多い。

いろんな子を見てきた。


そして、トラブルが起きた時にはどうしてもバイアスがかかるのを感じている。

 

うっかりすると、あの子がやったにちがいない、とか、この子は無関係だろう、とか思ってしまうので、大人として冷静に皆のことを見るよう努めてきたつもりだ。

もちろん、同じ輪の中にいる我が子に対しても。

 

 

でも、そういうことをいちいち考えない無意識の状態って、自分の中に隠れて存在していた「遍見」とやらが、溢れて出てきてしまうのだ。

 

我ながらショックな一件であった。

 

 

 

 

 

幼い頃の私はとにかく優等生だったから、先生に目をつけられるということがなかった。

 

ヤンチャな友人と私とが、まったく同じことをしても、 友人だけ見つかり注意された。

ゆきんこさんはそんなことするわけがない、とハナから大人たちの視界に入らずに済んだ。

 

 

だから、「まさかあんなにきちんとした子が……」っていうことが大いにあり得るのは、身をもってよく知っている。その逆も知っている。

 

よーく知っている、はずなんだけど、自分が大人になるとなんでこんなに色々忘れてしまうんだろう。 

 

一体人生のどのタイミングで、私は「大人」になっちゃったんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いじめられっ子だった精神医科が、自身の体験をもとに綴ったバイブル。

 

 

 

 

 

 

 

 

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