
放課後、息子とお友達の計4人を連れて遊びに出かけた。
遊びに出かけた、と書くと語弊があるかもしれない。私はペーパードライバーで車の運転ができないから、あくまでどこまでも徒歩である。
子供たちの春休みも終わり、久しぶりの授業で疲れていたはずだろうに、往復4kmの道のりを学校から帰宅後の彼らは私とまた平気で歩いていた。
凄まじい体力だと思うが、私も私で子らを見守りながら4kmを安全に歩ききったのだから素晴らしい。
歩いたのは、なだらかな丘のような場所が、遊歩道として中途半端に整備されている場所である。
一応人は歩けるが、足元は土。両サイドは草むら。
春はせいぜい大人の膝くらいまでしかない草も、夏は大人の背丈ほどになる。
そしては冬場は雪が積もり歩いていられないため、散歩するには春か秋しかない。
そういう道を、この日は子どもたちと、ずっと歩いた。
面白い遊具がなくとも、草が茂っているというそれだけで子どもたちは、もう大笑いである。
4人の子のうち3人は8歳。一人は6歳だった。
あっち行きこっち行きしながらニコニコと遊んでいる彼らが、ふと緑の草の中に溶けていくような錯覚をした。
夕暮れの中で人と自然が混ざり合い、物理的に一つになって光の中へと消えていく。
良い景色を見た、と思った。
4kmの遊歩道を歩き終え、我が家のある住宅街の方へ顔を向けると、Tシャツ姿の男の子がこちらを見ているのに気が付いた。
近所の放置子であった。
どこへ行ってたのー!と、遠くから彼に大声で聞かれた。
実はその日、4kmを歩く前にも同じ彼から、「どこへ行くの」と聞かれていた。
どこに行くというわけでもない、ただ歩いてくるだけだよ、と話したら、僕も行きたい、と言った。
お母さんの連絡先を知らないから、勝手に連れていくわけにはいかない、ごめんね、と私が断ると、なんで!いじわる!僕も行きたいのに!と怒ってしまったのをなだめてから私たちは出てきたのだ。
そうして4km歩いている間もその子は、さっきいたのと同じ場所で、私たちのことをずっと待っていた。
どこへ行ってたの、と聞かれて、どこというわけでもない、この道をずっと歩いてまた戻ってきただけだよと話した。
ただ歩いただけ、それこそが楽しくて尊いのだと分かった上で、「ただ歩いただけだ」と私は言った。
なんでもない会話がとても残酷だった。
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