息子の通う学校では、毎日リコーダーの宿題が出る。
「絶対やりましょう」ではなく「できればやりましょう」という類の宿題である。
息子は真面目に取り組んでいるが、ある日、リコーダーを持ち帰り忘れたことがあった。
忘れた!と自宅でそのことに気付いた彼が、 宿題チェック担当の私へ言った。
「では、歌います」
そして、ドーレシードシードミーと、リコーダーで演奏すべきところをすべて、息子は口で歌い始めた。
その様子を見ながら、ふと思い出したことがあった。
私の、中高時代の同級生のことだ。
彼女はとにかく体育が苦手だった。想定した通りに手足が動かないそうで、マット運動も、跳び箱も、平均台すらも最後までできなかった。
夏の体育は地獄だった。
当然泳げないからだ。
しかし彼女はめげなかった。
25mクロールのテストの日、先生へ申し出たのである。
「先生!私、歩きます」
泳げない人間にとっては、底の深いプールをただ歩くだけでも一大事だ。
いやむしろ、泳ぐより歩く方が難しいんではないか。
しかし彼女は、あっぷあっぷしながらも、25mプールを歩ききった。
それを見ていた私たちは拍手喝采。先生も、クラスで唯一「プールを泳がず歩いた」 彼女へ、テスト合格を告げた。
25mを泳げることよりも、何をするにも恥ずかしいあの思春期に「歩きます」と申し出た、彼女のメンタルの方が凄い。
そんな昔のことを思い出している内に、 息子による「歌」も終わっていた。
親によるチェック欄は、もちろん、花丸である。
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