丸井vs仁王連載  Vol.6 | 肝っ玉かあちゃんのひとり言

肝っ玉かあちゃんのひとり言

妄想の世界に逝っちゃってるヤツの戯言

このお話は高校2年という設定です。
そういうのが苦手な方は観覧にご注意ください。


続き物となっております。 こちらを先にお読みください。⇒ 1  ・ 2  ・ 3  ・ 4  ・ 5









Just for you








いつの間にか眠っていたようで、目が覚めた時部屋の中は真っ暗になっていた。



制服皺になったかも・・・なんて思いながら身体を起こすと、

机の上に置いている携帯が、メールが届いている事を知らせるランプを点滅させていた。



なんとなくだけど、その相手はブン太のような気がしながら携帯を開く。


受信欄に出た名前は予想通りブン太で、ボタンを押す手が震えた。



このまま何もなかったように振舞われて、あやふやなまま終わらせてしまうような気もしていたから、

メールがあった事に少しホッとしたけど、その内容はきっといいものじゃないだろう。



数回深呼吸をした後、私はブン太のメールを開封した。















たった1日で風景が変わるはずもなく、公園の中は昨日見たままで何一つ変わった様子はない。


違うのは・・・・・・私達の抱える感情だけだけだろう。



昨日は肩を寄り添って座っていたベンチに、お互い少し離れて腰をかけた。




ブン太からのメールは「今夜会える?」と、その一言だけだった。


会ってどうするの・・・?

何を話すの・・・?



『怖い』



そんな感情が心を震わせて、しばらく返事は返せなかった。


だけどこのまま怖がって、逃げていたって何も始まりはしない。

明日も学校がある。

私達は同じクラスになってしまった。

イヤでも顔を合わせ、1年間クラスメイトとして過ごさなくちゃならない。



私はブン太に何を言われたとしても受け止める覚悟を決めて、

「10時に昨日の公園で。」と、メールを返した。





そう。


メールの返事を返し、家を出てここに来るまで、

私はたくさんの覚悟を決めてここにやって来た。


どんな結果になっても泣かない。

ブン太には笑って「ありがとう」って伝えよう。

そしてこれからはクラスメイトとして仲良くやっていこう。


そう伝えようと、何度も心で反復した。



なのに・・・・・ブン太の顔を目にして、私の心は揺らめいた。


蹲ってしまいそうなほど苦しいのに、それ以上に好きだって気持ちの方が大きくて・・・・


やっぱり嫌だ・・・・。

どんな形であったとしても、ブン太の傍にいたい。


そんな気持ちがどんどん膨らむ。



ブン太の想い人の存在まで知ってしまって、この付き合いに何の意味があるのか・・・・。

『彼女』という立場なだけで、そこに何の感情もないのなら虚しいだけ・・・・・。


頭の中ではわかっている。

だけど心は、それでもかまわないと叫びをあげた。




「あの・・・・・さ。」




沈黙を破るかのように、ブン太が静かに口を開いた。


その瞬間、私は次の言葉を遮るようにわざと明るい声で話しだした。




「まさか同じクラスになれるなんて思わなかったね!」

「え?・・・あ・・・そうだな・・・・・」




私は卑怯だ。


ブン太の膝の上で握られた手が震えていた。

きっとブン太も覚悟を決めてここに来たのだろう。

冗談だったのか、ほんの気まぐれだったのか・・・・それはわからないけど、

ブン太はちゃんとけりをつけるためにやって来たんだ。


なのに私は・・・・そのブン太の覚悟を踏み躙ってしまった。



こんな事したって・・・お互いにいいわけもない。

こんな崩れそうな関係のまま付き合い続けたところで、未来が見えるはずもない。



それでも私は・・・・・ブン太と別れたくなかった。

気持ちのない関係だとしても・・・・この繋がりを終わらせたくなかった。



昨夜、フラれる覚悟で告白したはずなのに、今はフラれるのが怖くて仕方ない。


別れ話をされるくらいなら・・・・何も気づかぬ振りをするくらい容易い事・・・・・・・




私はブン太に話す隙を与えぬように、笑顔を向け、ひたすら話し続けた。




「ブン太って意外と恥ずかしがりやさんなんだね。」

「はぁ?」

「ふふ。大丈夫だよ。誰にも言わないから。」

「え・・・?」

「大丈夫。誰にも言わない。言わないから・・・・・」




だからどうか傍にいて・・・・・




ブン太の温もりを確かめるように、ベンチに置かれた彼の手をぎゅっと握り締めた―――――



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今回ちょっと短め。(かなりか?)



歌織ちゃんは自ら辛い道を選ぶ覚悟をしたようですね。

アーホー。←