丸井vs仁王連載  Vol.3 | 肝っ玉かあちゃんのひとり言

肝っ玉かあちゃんのひとり言

妄想の世界に逝っちゃってるヤツの戯言

このお話は高校2年という設定です。
そういうのが苦手な方は観覧にご注意ください。


続き物となっております。 こちらを先にお読みください。⇒ 1  ・ 2






Just for you







とある春休みの、部活が休みだった日。

クラスのやつ等と駅前のファーストフードでくだらない話をしていた。




「最近ヤってねーな・・・・・。」

「ガハハ!お前振られたんだっけ?」

「うるさいっつーの!お前なんてまだドーテーのくせに!!」

「それ言うなって・・・。最近マジで焦ってんだからよ!」

「もうすぐ高2だし、そろそろ捨てなきゃやベーよな。」




馬鹿みたいな笑い声を上げながら盛り上がる。


最近なんかいうとこの話だ・・・・・。



俺達もあと数日で高校2年。

ただ1学年上がるだけだって言うのに、最近自分がドーテーって事を焦りだすやつが増えた。



まぁ・・・・・斯く言う俺もそんな一人だったりする。



自分で言うのもなんだけど、俺はモテる。

中等部の時だって彼女がいない時なんてなかった。


だけど俺はいまだに経験はない。


俺だって別にヤリたくないわけじゃねーけど

いざ!!ってなると、失敗したらカッコわりぃ・・・・とか思っちまってどうにも先に進めない。

そしてそういう事を避け続けてるうちに別れちまう。

そんなことが続いていた。


それでも、「ま、そのうちなんとかなんだろぃ!!」とか、楽観的に考えていたが、

最近になって焦る理由が出来た。




高等部になってから、ずっと想いを寄せてる女がいる。


見た目もめちゃくちゃ可愛いけど、話し方とか仕草とか、なんせすべてが可愛い!!


本当ならすぐにでも告白してしまいたい。

アイツも俺に気があるのは一目瞭然で、周りからはすでに付き合ってると思われてるほどだ。


だけど俺は告白もせず、ずっと曖昧な関係を続けていた。



理由は・・・・・・・向こうから告白して欲しいから。



そんな回りくどい事をしてるのは、想うより想われたいとか、告白されたもん勝ち?みたいな・・・・

まぁ優位に立ちたいって言うのもあるけど、1番の理由は仁王と賭け。



仁王が「丸井が我慢できんようになって自分からするはずじゃ。」

とか言いやがるから、「ぜってぇアイツから告白させてやる!!」と、

俺は意地になって告白されるのをこうやって待ち続けている。



だけど先日、アイツが告白しようと思ってるらしいって話を耳にした。

俺が待ち続けてきた時がついにやって来た!!!



だけどそう喜んでばかりもいられない。

ここでさっき言ってた問題が持ち上がってくるわけだ。




「なぁ仁王。やっぱこの歳でドーテーってヤバイと思う?」

「さぁの?なんじゃ?ブンちゃんもついに大人の階段を上りたくなったんか?」




ニヤニヤとした笑みを浮かべる仁王。

マジこいつのこういう顔むかつく!!!




「ククッ。そんな睨みなさんな。もうすぐ付き合えるとわかって焦っとるんじゃろう?」

「わかってんなら言うなっての・・・・。」




だけど、なんだかんだでこうやって自分の弱みさえも晒せてしまうのは

俺は意外と仁王を頼りにしてるのかもしれない。




「まぁ、丸井がいまだにドーテーと思っとるヤツなんておらんじゃろうからのう。」

「そうなんだよ!それが問題なんだよな・・・・」

「自業自得じゃろう?」

「まぁそうなんだけどよ・・・・」




けどモテる俺がまだドーテーとかかっこ悪すぎだろぃ?

そんなこと言えねーっての!!




「そうじゃの・・・・誰か軽く遊べる女とでもヤってみるとか?」

「軽くねぇ・・・」

「なんなら紹介してやってもよかよ?」

「仁王が食った後の女とかぜってぇいらねえ!!」

「なら、最近噂のあの女とかどうじゃ?」

「噂の女・・・?」

「西崎歌織。」






――  西崎 歌織 ――



最近色んな噂が流れているヤツ。



中等部の頃に1度だけ同じクラスになった事があった。


すっげー仲がいい!!って訳でもなかったけど、

気さくでしゃべりやすいやつだった。


クラスが離れてからも、ちょくちょく話す機会もあったし、

卒業式の日なんかは、「これにサインしてよ。」とかってテニスボールを持ってきて、

「将来高く売れんぜ?」なんて冗談を返しながら、ジャッカルの似顔絵を描いてやった記憶がある。



だけど高等部に上がり中等部以上にクラスも増え、まったく会う事もなくなってしまった。

別にそれで俺の日常が大きく変わる事もなく、そのうちそんな存在さえも忘れかけていた・・・・・


西崎の名前を再び耳にしたのは冬休みが明けてすぐだったと思う。



『西崎歌織は誰とでもヤル軽い女。』



そんな噂を耳にした。


確かテニス部の先輩がそんな話を部室でしていたのが、1番最初だった気がする。


それからも西崎の噂を耳にする事はあった。

どれもよく似た内容で、「頼めばすぐに股を開く」とか、「名器の持ち主」とか・・・・。


けど別にそんな話は俺達の間じゃ珍しい事でもなく、同じような話はどこにだって溢れている。

そして俺達はただそれを話のネタに盛り上がるだけ。


西崎だって、そのうち違う噂に流されて消えていく存在のはず・・・・・




「ありえねぇだろぃ?」

「そうかのぅ?ドーテーを捨てるだけや言うても、どうせならウマイに越した事はない。」

「そりゃ・・・そうだろうけどよ。」




正直に「俺ドーテーなんだ」って言えばいいだけの話で、

そしたらこんな事で悩む必要もないんだけど・・・・・

やっぱりこの歳でまだ・・・・なんてなんかハズいって言うのもあるし・・・

好きな女との初Hで失敗なんて考えるだけで冷や汗が出る。


そうなるとやっぱどこかで経験をつむしか方法はないわけで・・・・・・。




「はぁ・・・・・西崎歌織か・・・・・・・」



かすかに残る記憶の中の西崎を思い出しながら、ため息に混じり名前を呟いた。









「あ、あれ・・・・西崎じゃね?」



仁王とのそんな会話を思い出していると、目の前で残り少ないコーラーを啜っていたやつが

窓の向こうを指差しながら立ち上がった。


ちょうど考えていた人物の名前が飛びだして内心驚いたけど、そんな素振りは見せずに

言われた方に視線を向ければ、向かいのカラオケボックスに入っていく女子の集団が1つ・・・・。




「え?まじで?」

「おう。今の立海のやつらだぜ!」




俺が見た時には西崎の姿は見えなかったけど、確かに見覚えのある顔がちらほらいた。




「なぁ、俺達も行こうぜ!」

「はぁ?」

「おお!!それいいな!」




おいおいおいおい・・・・。

俺まだ食ってるっつーの!!


だけど勢いづいたやつ等はノリノリで店を出て行き、

向かいのカラオケボックスへと走って行ってしまった。



それからはなんかあっという間だった。


どうやって話を付けたのか、俺がカラオケボックスに着いた時には

すでにもう一緒にカラオケをすることになっていた。




カラオケは嫌いじゃねーし、いつもなら盛り上げ役は俺の役目。

だけどその時俺は妙な緊張で盛り上がりきれずにいた。


だってそうだろぃ!?

俺のドーテー捨てる相手として名前のあがっている西崎が目の前にいるんだぜ?



向かい側の席で本に目を落とす西崎を盗み見る。


噂話はよく耳にしたけど、あんなデカイ学校で偶然見かける事なんて滅多になく、

1年ぶりに会った西崎は、俺の記憶の中の西崎とはまったくの別人に思えた。


いや・・・・もしかしたらそれほど変わってないのかもしれない。


でも、噂からくる先入観と、初めて見た西崎の私服姿があまりにも軽そうに見えて、

あぁ・・・噂は本当かもな・・・。なんて思ってしまう。



その時顔を上げた西崎と目が合ってしまった。




「あ・・・本・・・・見る?」

「いや・・・西崎が終わってからでいいよ。」

「!?」

「え?何その驚き?」

「ううん。なんでもない。」




いきなり目を逸らすのもあまりに不自然で、どうやって誤魔化そうかと思っていると

西崎の方から声をかけてくれた。


べつに本が欲しかったわけじゃねーから、西崎が終わってからでいいって言ったんだけど

俺のその言葉を聞いてなぜか西崎は驚き、そのあと顔を赤くしながら俯いた。


あ・・・・・・・れ・・・・?


俺だって伊達にモテ照るわけじゃない。

そういう反応には心当たりがある。


もしかして・・・・・西崎俺に気がある・・・?


俺はすぐに西崎の席の隣に移動して、色々と話しかけた。

話せば話すほど、俺の予感は確信に変わる。


噂を聞く限りじゃ、男慣れしてなんとなく下品なイメージだったけど、

ふと見せる表情や仕草が、下品と言うより艶っぽくて・・・・

かと思えば、話し方とか笑顔は可愛くて・・・・・


仁王には「ありえない」とか言っていた俺だったけど、

メアドを聞かれた時には、


『西崎だったら・・・・・いいかもな。』


そんな気持ちになっていた。






告白されたのはそれから数日後の春休み最後の夜だった。



呼び出された時点で告白されるって言うのはわかってたし

かなり舞い上がっていたと思う。


だって、これでドーテー卒業できるし、

アイツとも心置きなく付き合えるわけだ。


だから告白された時、俺は迷わずOKの返事をした。




けど付き合うにあたって俺には問題がある。


付き合ってる事が、他のやつらにバレるわけにはいかない。

だって、あくまで西崎との付き合いはドーテーを捨てるだけなんだから。

もしアイツの耳にでも入ったら俺の恋は終わっちまう。


どーせ西崎だって俺の事本気じゃねーんだろうろ思っていたし、

「付き合った事、誰にも言わねーでくんない?」

「ほら・・・ファンのやつらとかいるしややこしいのやだろ?」


そんな感じで、適当な理由を付けて口止めするつもりだった。



だけど・・・・・



告白の返事に、『別にいいけど』そう返した俺のそっけない言葉に、

ホッとしながら浮かべた微笑が、本当に嬉しそうで・・・・・


「よろしく」と言って差し出された手も少しだけ震えていて・・・・


初めて俺の名前を口にする時なんて、湯気が出そうなほど顔が真っ赤で・・・・・



俺との事は・・・・軽い気持ちなんだよ・・・な?

噂通りなんだろ・・・・?



そんな疑問が心に沸き、



『付き合う事、誰にも言わねーでくんない?』



その一言が言えなかった・・・・・・。



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あ~ぁ。ブンちゃん・・・・・。


ヒロインと付き合った理由はそういう事です。

ヒロインの噂の真相もそのうち明らかにしたいと思います。

たいした理由じゃないですけどね。ww


次回もブンちゃん視点。

次はブンちゃんの片思いの女の子も出てくる予定。

この先ヒロインのライバルとなる子です。



あ、ヒロインの名前は『西崎歌織』(にしざきかおり)です。

ライバルの子の名前は・・・・・今から考えます。