The Sence of Wonder -6ページ目

The Sence of Wonder

呼吸器医として、喘息・結核の診療の傍ら、卒煙支援もしています。
二児の母として、妻として、医師として・・・
日常のほんのちょっとした Sense of wonder を発信しています。

学生時代、免疫学の授業は基礎医学の花形的存在。
教授も若く意欲的だったし、なにより、
体の免疫がまるで、ひとつのドラマのように成り立っていくさまが
なんとも言えず不思議で、
基礎医学をどれも苦手とする中、
唯一楽しんで聞けた講義だったような気が・・・。

そんななか、大学3年のときに出版された、多田先生の
「免疫の意味論」は、平易な言葉で、
「自己」と「非自己」という
免疫システムを解き明かし、専門書というより
一般書として魅力あふれた、すばらしい一冊で
深い感銘を受けました。
多田先生の人間性が随所にがちりばめられていて
理系の本というより、文学、哲学書という感じでした。

その多田富雄先生の遺作である
「落葉隻語 ことばのかたみ」を
先日読了しました。

女医・ゆきみんと先生の診察室から

巻末の出版日は2010年4月20日となっていて、
あとがきには 
「死の足音を聞きながら書いた雑文」 
「この本が無事出版されることを夢見ている」との言葉。
見届けるかのように、出版翌日の4月21日に亡くなられたようです。

2001年に脳梗塞で死のふちをさまよった後、半身麻痺と言語障害を残しながら、
執筆や電子音声での講演など、精力的にご活躍されていたようです。
晩期は末期がんとも戦いながらつらい闘病生活を余儀なくされておられた。

知識人として幅広く深い教養をもち、
人間や科学に決して絶望せず、悪は必ず正されるべきと発信し続けた強い姿勢。
鋭い視点でありながらも、常に弱者への暖かいまなざしがあり、
ご自身の中に、根源的な「寛容の世界」を
持っておられたことが、この本を読むと切ないくらい伝わって
胸にしみて、涙がこぼれてきました。

第一部の最後のエッセイ「終わりから始まる未来」から引用します。

 「終わり」というのは、必ず何かが始まる、私の家でも、昨年は双子の孫が生まれた。
 ふっくらとした赤子のほっぺたをつつくと、あどけない微笑で応える。

 「そうなんだよ、じいじの世代はお前たちに大きな負の遺産を残した。
 すまなかったが、強く平和に生きておくれ」と語りかけたい気がする。
 同時にこの子が大人になるころ、この地球は大丈夫だろうか、
 目を瞑って想像してみた。私のいなくなった世界を思った。
 
 すると、不思議にも子供の走り回っている情景が目に浮かんだ。
 私のいなくなった時間の風景に、私の孫かもしれない子供が
 元気そうに遊んでいる。いや、誰の子でもいい。
 幼児が何人も無心に飛び回っている。

 私は長い時間その世界を想像し、これが私の死後の世界だと確信した。
 それ以外の情景は浮かばなかった。
 これからだってもっと生きにくい時代が続くだろう。
 でもあんな子供がいる限り、未来は大丈夫だろう。
 私は幸福な気持ちで、白昼夢の最後のページを閉じた。

 去年今年 貫く棒の如きもの  虚子

 力強い時間の連続性を信じて生きようと思った。

最後の「若き研究者へのメッセージ」。
今の時代、こんな気持ちで科学に向き合っている研究者が
いったいどのぐらい、いるのかしら・・・。
一医師として内省し、恥ずかしく、身が引き締まる思いです。

「死期が近い老人が折に触れ書いた単なる書き散らしにすぎない」と
本人がまとめた「ことばのかたみ」。
その中にある真実の重みを、しっかりとうけとめて繋いでいきたいものです・・・。
いまうちには、二歳の次女の手袋が、二つ。
二組ではなく、別々の手袋がひとつずつで、二つ。

私もよく手袋を落とします。
今朝も通勤中にポケットからはみ出して落としたところを
親切な方が声をかけてくれて、取りに戻ったり・・・。

そんなわけで、うちには片割れの手袋がいくつか。
迷子のてぶくろは、いったいどこにいってしまったのかしら・・・。

てぶくろがでてくる絵本って
けっこうありますよね。

うちにあるだけでも・・・

ウクライナ民話の「てぶくろ」 長女が0歳のときから読んでいて
せりふもまねするくらい。むくむくと巨大化するてぶくろ。
今読んでも、やっぱり楽しい。

女医・ゆきみんと先生の診察室から

「ゆきのひのころわん」 おなじみ黒井健さんのころわんシリーズ。
落し物の片割れの手袋を持ち主に届けるお話。

女医・ゆきみんと先生の診察室から

新美 南吉 「手ぶくろを買いに」 なんだかほろりとしてしまう。
ごんぎつねを思い出すからかしら。

女医・ゆきみんと先生の診察室から

そして、いま長女のお気に入りは、なんといっても
フローレンス・スロポドキンの「てぶくろがいっぱい」。

女医・ゆきみんと先生の診察室から

私も、このお話がとっても大好き。
まいごの手袋たちが、
親切な人たちの手で集まって、また持ち主に戻っていく。
雪の中、たくさんの赤い手袋をつるしたロープの光景を
思い浮かべるだけで、あったかーい気持ちになります。

それから、酒井駒子さんのイラストに惹かれて
「赤い手袋の奇跡」のシリーズも、加えましょうか。
少女のひたむきで一途な気持ちに、涙腺緩みっぱなし。
「クリスマスの奇跡は、信じる人に起きる」

女医・ゆきみんと先生の診察室から

誰もがみんなひとりにひとつ、
自分の「てぶくろ」の話を持ってるのかも。

さて、なくしたてぶくろのゆくえは・・・?
なにか物語ができそうですね。

皆さんも、お気に入りの手袋ストーリーが、ありますか?
ひさびさ、お仕事関連の記事です。

今日は午後から、
「タバコやめたい・やめさせたいママ・パパあつまれ」のミニミニ講座、
個別相談会で講師をしてきます。

知り合いの小児科のドクターと
年末に禁煙支援関係の会合でたまたま一緒になりました。
ご近所のビルの二階に開業していて、
次女の保育園の園医でもあります。

帰り道の電車の中の会話で・・・

 今度クリニックの上の階を借りて、
 子育て支援の広場にしようと思ってるの。
 ただし、診療所としては認められないから、
 名目上は『スタッフルーム』ということにしたわ。
 
 そこは、保育士さんもいるちょっとしたプレイルームにして、
 子育てセミナーとか、子連れママの集まりとかに
 利用してもらおうという考えなの・・フフフ。

 とりあえず、月一回くらいで、いろんな人を呼んで
 ちょっとした講座を開こうとおもってるのよ。

 そうそう、タバコやめてもらいたいママ・パパが結構いるから、
 私がそのテーマで話そうかと思ってたんだけど、
 そうだ、よかったら、ゆきみんとさん、やってくれない?

という流れで、その場でミニミニ☆コラボ計画が立ち上がりました。

年が明けて、クリニックのHPをみてみたところ、
「ポケットランド」という名前の
小さなプレイルームがお披露目されていて、
子育て講座、ストレッチ教室、バザー、タロット占い、ベビーマッサージ、
針灸接骨院出張マッサージまであって、その充実ぶりに驚く。
しかもすべて託児可能。託児料金は一時間100円程度と格安・・。

<子育て講座>は毎月専門家のセミナー開催、となっていて、
ベリネイタルビジット(生後4ヶ月までの小児保健指導)
子育て相談・ワクチン相談、おっぱい相談・・と書かれている。
そして「一月の催し物」のところには・・・
「タバコやめたい・やめさせたい ママ・パパ集まれ」と掲示してありました♪。

今日は予約は一名だけらしく、完全な個別相談会となりそうですが、
この楽しいコラボ企画、細々とでも、ながーく続けて、子育てをきっかけに
禁煙に興味をもってくれるパパやママが増えてくれたらいいな~。

後で知ったけれど、「ポケットランド」に週三回きている保育士さんは
なんと、次女の保育園を昨年の三月で定年退職した元園長先生だった・・。
子どもへのまなざしが本当に暖かく、人間的にもすばらしい人なので、
子育て広場にぴったりな人選で、ちょっと感動。
しかも、「ポケットランド」は子連れの母飲み会でも利用可能で
次女の保育園のママ仲間でも話題になってました。

年末の会話の続き・・・

 わたし、自分のカフェとか持つのが夢だったのよね~。
 自分が子育て中は、こういう場所がなくて苦労したわ。

別の形で夢をかなえた、小児科のママドクター。素敵。
声をかけていただいて、大変光栄です!

今日は楽しくお話させていただきます~♪
(というか、禁煙の話をしているときはいつも楽しいけど・・笑)

それにしても、「禁煙」がつなげてくれたご縁、
私にとって、本当に大きな広がりになってくれてます。 感謝です。


女医・ゆきみんと先生の診察室から

↑「子どもに無煙環境を推進協議会」の今年のカレンダーにもなった
 啓発ポスター 「ボクらの未来にタバコはいらない!!」 です。

(あいち造形デザイン専門学校1年 千葉 加奈子さんの作品)